予防診療案内その４
避妊・去勢手術 　術創写真あり　

左は猫ちゃん、右はわんちゃんの避妊手術から１週間後の術創です。

左の猫ちゃんは、実は皮下脂肪が少し腫れていますが、皮膚はほぼ癒合しています。
右のわんちゃんは腫れもなく7日で見た目上は癒合しています。

切開した皮膚を縫合した場合、強度が最大化するには14日間かかるとされています。そこで一般的には2週間後の抜糸としている動物病院が多いように思います。
しかし、皮膚表面に縫合糸が出ていると動物にとっては気になります。縫合糸が気になる状態でエリザベスカラーなり術後服なりを着せて2週間も過ごすのは動物にとっても飼い主様にとってもストレスだと思います。

当院では、後に溶けてなくなる吸収糸を用いて真皮縫合を行い、なるべく皮膚縫合はしません。トップ写真も抜糸後ではありませんので皮膚縫合の跡はありません。
術後1週間で再診にいらしていただきますが、傷の状態を確認して問題なければ何もせずに終了です。縫合糸は体の中にあるので抜糸はしません。体の中の縫合糸は徐々に吸収される吸収糸です。

また、手術時には感染予防のため、術創以外を滅菌ドレープで覆いますが、タオル鉗子というものを用いて皮膚に固定するとそこが傷になってしまうことがあります。当院ではドレープの固定は縫合糸で行っておりますので、余計な傷はできません。
こういった工夫により短期間でキレイに治ります。

※全ての症例が1週間で治るわけではありません。

手術方法に関して

女の子の場合避妊手術と言います。卵巣（と子宮）の摘出術です。男の子場合は去勢手術と言います。精巣（睾丸）の摘出術です。
避妊手術を卵巣と子宮両方を摘出するのか、卵巣のみを摘出するのかの方針は動物病院によって異なります。
はら動物病院では基本的に犬も猫も卵巣摘出術を行っています。

当院の設備では子宮動静脈のシーリングが難しい場合があり、子宮も切除する場合には縫合糸での結紮が必要になります。尿管巻き込みや術後の癒着リスクを低減する観点から、卵巣摘出といたします。
子宮に異常を認めた場合は子宮も切除しています。

当日の流れ　去勢手術も避妊手術も日帰り手術

はら動物病院では、去勢手術も避妊手術も日帰りです。

①まずはお電話で手術日程に関してご相談ください。カルテを確認して必要な場合は一度ご来院いだくこともあります。
②当日は9-10時にご来院いただきます。お時間がない場合は同意書をご記入いただいてすぐにご帰宅可能です。
③午前診療の合間に術前検査を行います。胸部レントゲン検査、血液検査（血球計算、血液化学11項目+電解質）を行います。
④午前診療終了後に麻酔導入→毛刈り→手術を行います。
⑤麻酔から覚醒次第、お迎え時間のお電話をいたします。（通常17時ごろのお迎え）
⑥1週間後に再診にいらしていただいて、術創の癒合を確認できたら終了です。

当院の去勢手術の特徴　腹腔内には異物を残さない手術

・猫去勢手術
陰嚢正中を切開し、精管と血管で結紮を行い精巣を摘出します。
縫合糸は使用しません。体内に異物を残さない手術を行っています。

・犬去勢手術
精管・血管をシーリングにより止血し精巣を摘出するため、体内の深い部分には異物が残りません。皮膚（皮内縫合）では吸収糸を使用するため皮内にはしばらく糸が残っている状態になります。残っている糸は外からは見えません。数か月で溶けて吸収されます。

当院の避妊手術の特徴　しっかりした鎮痛で痛みの少ない手術

・猫避妊手術
鎮痛薬として、トラマドール とメロキシカムを使用しています。トラマドールを使用するようになってから、痛みがかなり軽減できている印象です。トップ写真の猫ちゃんは覚醒後、おかえしまでの間様子を見に行くとゴロゴロスリスリしてくれていました。
皮膚は基本的に皮内（真皮）埋没縫合を行っており、抜糸は不要です。表皮の寄りが甘い場合は数針皮膚縫合も行う場合があります。切開した皮膚が十分な強度に回復するまでには２週間かかりますが、皮内縫合でしっかり寄せている場合は１週間でエリザベスカラーを外して普段通りの生活に戻れます。
体内に残る糸はモノフィラメント吸収糸であり、いずれ溶けてなくなります。

・犬避妊手術
鎮痛薬としてモルヒネとメロキシカムを使用しています。モルヒネは麻薬指定されている鎮痛薬です。「麻薬」というと悪いもの、怖いもののようなイメージがあるかもしれませんが、鎮痛薬の一種ということでしかありません。痛みに対して使用する場合には人でも常習性は生まないとされています。
モルヒネを使う前は、避妊手術後の覚醒時に痛がって鳴いてしまうわんちゃんが一定数出るのは仕方がないと思っていました。しかし、モルヒネを使うようになって、必要な鎮痛剤をしっかり使えば痛みの少ない手術ができるということを実感しています。
皮膚縫合（皮内縫合）に関しては猫避妊手術と同じです。

料金表

犬は5kg未満の料金です。体重5kgごとに料金が上がります。詳細はお問い合わせください。
当院の手術料金は、術前検査や術後の鎮痛薬、術後再診など全てを含めた料金です。他院と比較する場合は、総額提示をしていない動物病院が多いのでご注意ください。
ペッツファーストさまの手術チケットをご利用いただけます。
保護犬猫の割引制度はお問い合わせください。
※保護した子猫の時から当院で診察している場合を除き、保護犬猫である何らかの証明が必要です。

別途料金が必要になるのは、乳歯抜歯や鼠経・臍ヘルニア整復を同時に行う場合、潜在精巣の場合、入院をご希望の場合、エリザベスカラーではなくエリザベスウェアをご希望の場合、保護猫ちゃんなどで猫エイズ/白血病ウィルス検査を行う場合、マイクロチップを挿入する場合などです。