
突然倒れて手足を激しく動かす、体を硬直させる、意識がなくなる。
初めてこのような様子を見た飼い主さまは、「このまま亡くなってしまうのではないか」と驚かれると思います。
しかし、発作にはさまざまな原因があります。
すべての発作が「てんかん」ではなく、脳以外の異常によって起こる発作や、脳炎・脳腫瘍など脳そのものの病気による発作もあります。
当院では、年齢や犬種だけで特発性てんかんと決めつけず、発作の様子、経過、身体検査、神経学的検査、血液検査などを組み合わせて、原因と緊急性を評価します。
このような症状は発作かもしれません
・突然倒れ、手足を激しく動かす
・全身が硬直する
・意識がなく、呼びかけに反応しない
・口をくちゃくちゃ動かす
・顔や片側の手足だけが小刻みに動く
・突然ぼんやりして動かなくなる
・何もない空間を見つめ続ける
・よだれ、排尿、排便を伴う
・発作後にふらつく、歩き回る、目が見えないようになる
・短時間の異常行動を繰り返す
発作は、必ずしも全身を激しく震わせるものだけではありません。
体の一部分だけが動く発作や、短時間の意識・行動の変化として現れることもあります。
診察室では発作が起きないことが多いため、安全に撮影できる場合は、ご自宅での動画が診断にとても役立ちます。
発作が起きたときに記録していただきたいこと
・発作が始まった時刻
・発作が続いた時間
・意識があったか
・全身か、体の一部分だけか
・発作前後の行動
・1日に何回起きたか
・誤食や薬物摂取の可能性
・現在使用している薬やサプリメント
発作中に飼い主さまが噛まれてしまうと小型犬や猫であっても重傷を負うことがあります。
飼い主さまが対処に慣れるまでは直接動物に触らず、周囲の家具や階段から離し、ぶつかってけがをしないように見守ってください。
すぐに受診が必要な発作
次のような場合は、緊急性が高い状態です。
・発作が5分以上続いている
・発作が止まっても意識が戻らない
・短時間に発作を繰り返す
・24時間以内に複数回の発作がある
・呼吸状態や体温に異常がある
・誤食、中毒、低血糖などが疑われる
・初めての発作で、発作後も様子がおかしい
長時間続く発作や繰り返す発作は、脳や全身へ大きな負担をかけます。
「もう少し様子を見よう」と待たず、早めに動物病院へ連絡してください。
すべての発作が「特発性てんかん」とは限りません
発作の原因は、大きく分けて次のように考えます。
・反応性発作
低血糖、肝臓病、腎臓病、電解質異常、中毒など、脳以外の異常によって起こる発作です。
原因となる全身疾患を治療することが重要です。
・構造性てんかん
脳炎、脳腫瘍、脳血管障害、先天性の脳形成異常など、脳の中に発作を起こす病変がある状態です。
・特発性てんかん
検査で明らかな全身疾患や脳の構造的異常が確認されず、遺伝的素因や原因不明のてんかんが考えられる状態です。
若い犬だからといって、必ず特発性てんかんとは限りません。
発作が急速に悪化している場合、発作以外にも神経症状がある場合、治療を行っても発作が増えていく場合などには、年齢が若くても脳の構造的な病気を考える必要があります。
特にフレンチ・ブルドッグなどの短頭種では、一般的に特発性てんかんが多い年齢であっても、脳炎や脳腫瘍などの構造性疾患が隠れていないかを慎重に考えます。
国際的な基準を参考に診断を進めます
犬のてんかん診断では、国際獣医てんかんタスクフォース(IVETF)が提唱した診断基準があります。
当院では、この基準を参考にしながら、
・発作が本当にてんかん発作らしいか
・初めて発作が起きた年齢
・発作と発作の間の神経学的状態
・血液検査や尿検査の結果
・犬種
・発作の頻度と進行性
・治療に対する反応
などを総合的に評価します。
一次診療で可能な検査を行ったうえで、脳炎や脳腫瘍などが疑われる場合には、MRI検査や脳脊髄液検査が可能な専門施設への紹介をご提案します。
猫の発作についても、血液検査だけで「てんかん」と決めつけず、全身疾患や脳の病気を含めて原因を考えます。
当院で行う主な検査
・発作動画と発作歴の確認
・身体検査
・神経学的検査
・血液検査
・血糖値、電解質、肝臓・腎臓機能の確認
・必要に応じた尿検査/血圧測定
・レントゲン検査
・超音波検査
・必要に応じた専門施設への紹介
発作の原因や必要な検査は、年齢、犬種、発作の様子、発作以外の症状によって異なります。
すべての症例に同じ検査や薬を機械的に行うのではなく、その子の状況に合わせてご相談します。
自宅で使う緊急薬は基本的に点鼻薬
発作が長く続く子や、短時間に発作を繰り返す子では、自宅で使用する緊急薬を処方することがあります。
当院では基本的に鼻から投与する点鼻薬を処方しています。
点鼻薬を使用して発作が止まった場合でも、発作が長い、繰り返す、意識が十分に戻らない場合には受診が必要です。
処方時には、
・どのタイミングで使用するか
・何回まで使用できるか
・使用後に受診すべき条件
・保管方法と使用期限
をご説明します。
発作治療薬には複数の選択肢があります
長期的な発作予防には、発作の頻度、重症度、群発発作の有無、基礎疾患、年齢、生活環境などを考慮して薬を選びます。
犬では、フェノバルビタール、臭化カリウム、ゾニサミド、レベチラセタム、イメピトインなど、複数の治療選択肢があります。
薬ごとに、効果が期待できる発作のタイプ、必要な血液検査、副作用、投与回数などが異なります。
「新しい薬だから良い」「昔からある薬だから悪い」ということではなく、その子に合う薬を選ぶことが大切です。
猫でも、病気の原因や体調を考慮しながら、使用する抗発作薬を選択します。
重積発作・群発発作にも対応します
発作が止まらない発作重積や、短時間に繰り返す群発発作では、できるだけ早く発作を止め、再発を防ぐ治療が必要です。
院内では、発作止めの薬だけでなく、必要に応じて複数の抗発作薬、静脈点滴、体温管理、血糖・電解質管理などを組み合わせます。
2023ACVIMコンセンサスステートメントに則り、早期に複数薬を併用することによる速やかな回復を目指します。
ただし、人工呼吸管理や持続的な脳波測定など、高度な集中治療が必要と判断した場合には、救急・専門施設への搬送をご相談します。
治療目標は「1回も発作を起こさないこと」だけではありません
抗発作薬を開始しても、すべての症例で発作が完全になくなるとは限りません。
治療の目標は、
・発作の回数を減らす
・1回の発作を短くする
・群発発作や発作重積を防ぐ
・薬の副作用を最小限にする
・発作のない期間を長くする
・犬猫とご家族の生活の質を保つ
ことです。
発作日誌をつけ、発作の回数や長さ、薬の変更後の経過を記録することで、治療効果をより正確に判断できます。
このような場合はご相談ください
・初めてけいれん発作が起きた
・てんかんと言われたが、診断の根拠がよく分からない
・若い犬だが、発作が急速に増えている
・フレンチ・ブルドッグで発作が起きた
・薬を飲んでいるのに発作が続いている
・短時間に何度も発作を繰り返す
・自宅用の緊急薬を持っていない
・座薬以外の緊急薬について相談したい
・薬の選択肢や副作用を整理したい
・MRI検査や専門施設への紹介が必要か相談したい
発作は、起きている時間だけでなく、年齢、犬種、発作間の状態、進行の仕方が診断の大切な手掛かりになります。
発作を繰り返している場合や、現在の診断・治療に不安がある場合は、一度ご相談ください。
