胆嚢疾患 胆嚢摘出術

トップページの院長挨拶に、当院での手術実績を載せてそれぞれの手術のブログ記事へのリンクを貼っていたのですが、いくつかブログ記事にしていない手術がありました。
ということで胆嚢切除です。

当院では本稿執筆時点までに2例実施しており、2例とも元気に回復してくれました。トップ写真はその2症例です。左右で違う子の手術写真です。
1例目は手術経験が豊富な先生をお呼びして執刀をお願いしました。2例目は同じ先生にご指導いただきながら執刀させてもらいました。今後、当院スタッフだけで手術が可能かというと、不可能ではないですがちょっとまだ難しいですかね。指導医の都合がつかず、どうしても二次診療にも行けないという症例に出会ってしまったら、飼い主様と相談の上で当院スタッフだけで行うこともあるかもしれません。手術をお願いできる先生は複数いらっしゃいますので、当日~翌日に全ての先生の都合がつかないということは極めて少ないと考えています。自分でできない治療でもどうにか当院でできるように準備を整えておくことは院長としての大事な仕事の一つだと考えています。

肝臓で作られた胆汁は、胆のうで濃縮・貯蔵されます。食事刺激で十二指腸に分泌されて消化を助けます。
胆汁は消化液なので、自己消化を受けないように胆嚢は内膜に粘液を分泌します。この粘液が過剰になってしまう状態が胆嚢粘液嚢腫です。
その粘調性の高い硬い粘液が総胆管を閉塞させてしまうことがあり、胆管閉塞によって突然具合が悪くなります。
病態の進行は緩徐ですが、胆管閉塞や胆嚢破裂を起こさない限りは無症状なので、症状としては急性発症します。
胆嚢破裂の状態まで進行していると、手術しても半数近くが亡くなると言われています。当院の2症例は来院された日に診断・手術ができているので破裂はしておらず、その結果経過が良かったのだと思います。

診断で大事なのはエコー検査です。ある程度詳細に観察できる中位機種以上のエコー機器で検査することが大切です。誰が診るかよりもどの機械で検査するのかで判断が大きく変わってしまうことがあり得ます。

胆嚢摘出術は、かつては手術をしても7割亡くなる手術でした。これは何故かというと、昔はエコーがなかったり、あっても性能が低かったりで黄疸を認めても胆嚢・胆管の疾患なのかどうかを診断することが難しく、胆嚢が破裂するような状況まで手術に踏み切れないことが多かったからです。
近年、エコー機器の性能の向上により破裂前に診断・手術ができることが増えると手術成績は格段に向上しました。
私も、かつての勤務先で新しいエコーを入れる前は、急性腹症の黄疸症例で私では胆のう胆道系疾患なのか診断ができず二次診療施設をご紹介した際に、紹介先ではエコーで診断がついて手術になることが不思議でした。二次診療の先生は凄いなと思っていました。もちろん専門の先生の診断力・技術力は素晴らしいと思いますが、胆のうの状態を判断するのに最も大切なのは良いエコーで診ているかどうかだと思います。

手術ができなくても診断さえつけば手術ができる施設をご紹介すれば良いと思います。しかし、黄疸がそれほど顕著ではない急性腹症の症例が実は胆嚢・胆管疾患だった場合に内科的治療で様子をみてしまうと大変なことになります。
当院のエコーは2023年の開業時に新品で中位クラスの機種を購入しています。一次診療施設としては十分な性能です。動物の場合、CT検査は全身麻酔が必要でかつ高額なため、画像診断機器としてはエコーが非常に重要です。

また、ある程度以上のエコーであれば、健康診断時に無症状でも初期段階の胆嚢異常を検出できることがあります。
胆嚢のエコー画像の異常から甲状腺機能低下症の診断につながり、甲状腺ホルモン剤の投薬によって胆嚢の状態が改善した症例もいます。
全ての病気がエコーで検出・診断できるわけではありませんが、血液検査と同じくらいの意義がある検査ですので、年に1回はエコー検査を含む健康診断を受けるようにしましょう。

ただ、胆のう摘出術は、術前に胆管造影CT検査を行い、肝管の走行をCTで確認してからの手術を推奨されている先生もいらっしゃいます。当院はCTがないのでやりようがないですし、CT設備のある二次診療施設なら必ずそこまでしているわけでもないようですが、設備の整った動物医療センターレベルでの治療をご希望の場合は複数施設をご提案できますので、ご相談ください。
現在でも胆嚢破裂症例の術後生存率は五分五分と言われています。破裂が疑われる場合は二次診療施設で治療を受けた方が術後管理の面でも良いかもしれません。
しかし、全ての飼い主さまが二次診療施設に速やかに行けるわけではありませんので、様々なリスクを踏まえた上でも当院で治療をご希望された場合は、胆のう破裂症例でも当院でできる限りの治療を行います。