軟部組織肉腫 ※手術写真が表示されます

体表の悪性腫瘍を切除した症例です。

この子は、別の場所にできた良性の体表腫瘤の切除をご希望されておりました。手術当日に体表を精査したところ他にも多数の腫瘤を認めました。
切除予定でなかった腫瘤は全て針生検を実施して、1つを除いて良性を示唆する成分が採取されました。1つは全く何も採取できなかったのですが、良性腫瘤疑いとして手術を行いました。
ところが、その何も採取できなかった腫瘤の病理組織学的検査結果は、軟部組織肉腫という悪性腫瘍でした。
良性疑いで最小マージンで切除したため、切除縁に腫瘍細胞を認め不完全切除の可能性があるという診断でした。
軟部組織肉腫は針生検で細胞が採れづらい悪性腫瘍で、今回の場合は低悪性度で正常に近いため更に細胞が採れづらかったのだと予想されます。

軟部組織肉腫は再発するごとに悪性度が増す可能性が示唆されています。
低悪性度なので、辺縁切除でも再発しない可能性もありますが、切除できるものなら完全切除した方が安心です。飼い主様とご相談の結果、拡大手術を行いました。

最初の手術の病理検査の結果では、水平マージンは確保できているが深部マージンが取れていないという結果でしたが、今回は絶対に根治させる拡大手術です。当初の腫瘤があった想定の部位から水平方向も2cm以上のマージンを確保し、深部マージンとしては皮筋を切除しました。
悪性腫瘍の深部マージンはしっかりした線維性の膜を腫瘤と一括して切除することが大切です。小型犬や猫の場合は皮筋では不十分な場合が多く、より底部の広背筋膜などを切除する必要がありますが、本例は大型犬のため皮筋膜に十分な厚さがあり、底部マージンは皮筋の切除といたしました。

再手術の病理検査の結果では完全切除できておりました。

本例のように針生検してもわからない悪性腫瘍もありますが、できものに気づいたら放置せずにまずは針生検を行うことが大切です。
針生検で使う針は注射針ですので、動物が感じる痛みは注射するのと同じ程度です。
脂肪腫のように見える悪性腫瘍もあります。愛犬愛猫を撫でているときに、できものや膨らみを見つけた場合は、はら動物病院までご相談にいらしてください。