猫知覚過敏症候群?

どうもぽんちゃんです。
ぽんちゃんは院長原の自宅で暮らしている愛猫です。
かわいいかわいいぽんちゃんなのですが、腰のあたりの皮膚が波打つようにビクビクして、その後腰背部から尾を通常のグルーミングとは異なる勢いで舐めるような症状が出てしまいまして、それからというものソファの下にこもりっきりであまり出てこなくなってしまいました。
獣医学的に確立されている病態とは言えないと思いますが、どうも猫知覚過敏症候群っていうのがあるんですかね。それっぽいのかなと。
神経質なタイプの猫ちゃんにとって、元気な子供がいる家庭はストレスになっているのかもしれません。
トイレの場所とかも変えてあげなきゃなと思いつつもまだできていないので、今度の休みにやります。

そういった環境改善(子供が入ってこない安心して過ごせる避難場所や、安心して排泄できる場所に大きなトイレを設置)なども大切ですし、猫は肉食獣ですからストレスを発散のためにしっかり遊んであげることも大切です。
でも、その辺を頑張ってもいまいちよくならないこともあると思います。薬を使えば落ち着くならやってあげたいのが飼い主の気持ちです。
インターネット上ではお困りの方もそこそこいらっしゃるみたいなので、今のところのぽんちゃんの治療薬の使用経過を書いておきますので参考にしてください。

①プレドニゾロン5mg 1錠SID
ちょっと少なめですが、まずはアトピー性皮膚炎かもしれないと考えてステロイドを使ってみました。無効でした。
②ジルケーン
無効でした。
(※今回のぽんちゃんの病態には無効でしたが、ジルケーンは行動学の獣医専門医が病態によっては推奨する良い製品です。)
③ガバペン
無効でした。
④フルオキセチン
多少マシになった気がします。ただ、国内で手に入るのは犬用のリコンサイル錠というフレーバー錠で、猫に飲ませるには大きくて大変です。
⑤ソレンシア
本稿執筆の前日に皮下注射しまして、本日の様子として妻からLINEで送られてきたのがトップ写真です。
久しぶりにぽんちゃんがソファの上でくつろいでくれているそうです!
これで万事解決というわけではありませんが、少なくとも今まで投与した薬の中では一番良さそうです。

ソレンシアは変形性関節症治療薬です。変形性関節症では、神経成長因子NGFが増えることで疼痛が強まることが分かっています。このNGFに対する抗体薬がソレンシア(犬はリブレラ)で、NGFを中和してくれます。基本的には月に1回の皮下注射です。
神経成長因子は若齢犬猫の成長には必要なので、12ヶ月齢以上の猫が対象です。
ぽんちゃんの症状が変形性関節症による症状だと考えたわけではなく、皮膚が過剰にビクビクするということは知覚神経の入力が過敏・過剰になっている可能性が高いのではないかと考えました。その緩和にNGF抗体薬が有効なのではと予想しての使用です。

ぽんちゃんは、うちの子なので私の判断で私が良いだろうと思う治療を自由にできるわけですが、ソレンシアは注射薬で動物用医薬品なので一般の飼い主様が購入することはできません。
また、猫知覚過敏症候群を疑う症状に対しての使用は適応外ですので、動物病院で相談されてもいきなりは打ってくれないと思います。私もいきなりは使っていないですし。
そもそも「猫知覚過敏症候群」というのも、ぽんちゃんにそういった症状が出たので知りましたが、それまでは知りませんでした。獣医師の認知度は低いと思いますし、果たしてその分類が正しいのかもわかりません。

実は腰椎~尾椎あたりに関節炎があって、それが緩和されただけという可能性ももちろんありますが、ぽんちゃんは1歳ですしプレドニゾロンに無反応ですし、その可能性は高くはないと考えています。

猫知覚過敏症候群にソレンシアが効いたかもしれない、というお話のご紹介でした。
当院のお近くでこんな症状にお困りの猫ちゃんの飼い主様がいらっしゃいましたら、はら動物病院までご相談ください。

~ここから追記~
ソレンシアを打って1週間経ちました。その後、その他の内服は併用しておりません。
経過ですが、以下のような感じです。
接種翌日 写真の通りかなり良い 皮膚のビクビク著減
接種2日後 皮膚のビクビク再燃 以前の状態に近い やっぱりソレンシアではダメなのか....
接種3日後 皮膚のビクビクあるが少し減った印象 やっぱり効いている?
接種4日後 更に症状減 良さそう
接種5日後 ほぼ普通? たまにビクビク
接種6日後から 症状ほとんどなし
といった経過です。
著効→再燃となって、そもそも関節炎の薬だしやっぱりダメか、と思ったのですが、徐々に改善して今はもうほとんど普通です。
本当にソレンシアが効いたのか、たまたまなのか、ソレンシアが効いたのだとすると1か月くらいしたら再燃してしまうのか、など疑問と不安は多々ありますが、ソレンシア接種を境に症状が改善したことだけは事実です。

その後、いろいろ調べてみると、古いセミナーで猫知覚過敏症候群に触れているものを見つけまして、抗炎症治療とSSRIのコンビネーションで管理が可能になった症例がいるということでした。
私が見つけられた学術情報はその1件だけで、新しい知見は見つかりませんでした。