ステロイドによる多飲多尿の軽減

ステロイド剤はさまざまな疾患で使用するなくてはならない大変重要な薬です。
プレドニゾロンなどのステロイド剤は①糖質コルチコイド作用と②鉱質コルチコイド作用という2種類の作用を持ちます。
プレドニゾロンを使用する場合は①の糖質コルチコイド作用である、抗炎症や免疫抑制作用を期待しての使用であり、②の鉱質作用である電解質代謝作用(ナトリウム貯留 カリウム排泄)は副作用扱いとなることが多いです。
生命に関わる重症疾患で免疫抑制剤としてステロイド剤を使用する場合は、②の副作用が出てもプレドニゾロンを使い続けることが多いです。論文上のエビデンスが豊富で、かつ使い慣れている薬ですので他の薬に変更することは難しい場合があります。
ただ、生命に関わる状態ではないけれども、ステロイド剤でしっかり抗炎症したいことも多くあります。
主にアトピー性皮膚炎の場合です。
犬アトピー性皮膚炎の抗炎症・抗掻痒薬としては、副作用が少ない新しい薬が複数登場しておりますが、未治療や増悪期の皮膚が肥厚している状態ではステロイド剤が必要なことが多いです。急性期にはしっかり効く量を適切な期間使用することが大切です。ステロイド剤の力で皮膚を正常な状態に戻してあげれば、その後は副作用が少ない別の薬に移行できることが多いです。ここで中途半端になってしまうと、なかなか満足できる状態まで良化しなくなってしまいます。
ステロイド剤をしっかり使いたいけれども、鉱質作用の副作用で多飲・多尿症状が酷く、安眠が妨げられてしまう。このような場合に困ってしまうことがあります。
そのような場合にはメチルプレドニゾロンの内服が有効かもしれません。
メチルプレドニゾロンは、プレドニゾロンよりも糖質作用がわずかに強く、鉱質作用はやや弱いです。プレドニゾロンと同様の効果を得ながら多飲多尿の副作用を軽減することが可能です。
病態や継続治療にかかるコストの面などから、ステロイド剤から他剤への移行が難しいけれども多飲多尿で困っている、というようなわんちゃんの飼い主様がいらっしゃいましたら、はら動物病院までご相談ください。
~2025.03.24追記~
プレドニゾロンよりもメチルプレドニゾロンの方が多飲多尿の副作用が少ない、というのは、ある獣医皮膚科専門医から聞いた話で、実際に使用したところ確かにプレドニゾロンより多飲多尿が少なかったという飼い主様のお話もいただきましたので、それは間違いないです。
しかし、「鉱質作用が少ないから多飲多尿が少ない」という私の理解は間違っていたと思いますので修正いたします。
鉱質作用とは、主にアルドステロン作用であると考えると、ナトリウムと水の再吸収亢進が主な作用であり、浮腫傾向を生じどちらかと言うと尿量は減る方向だと思われます。
ステロイド剤やステロイドホルモンが過剰になるクッシング症候群で多飲多尿が生じる主な原因は、抗利尿ホルモン不全による二次性尿崩症であり、ステロイド剤の種類による多飲多尿の副作用の強さの違いは、この抗利尿ホルモンの分泌や受容体をとのくらい阻害するのかの違いだと思われます。