心臓病犬におすすめのフード

日本で飼育されているわんちゃんは圧倒的に小型犬が多く、小型犬は僧帽弁閉鎖不全症(心臓弁膜症)の罹患率が高いです。
治療としては強心薬や降圧薬、利尿剤を用いる内科治療と、閉鎖不全を起こしている弁がしっかり閉鎖するように治す外科治療があります。

治療というとどうしても薬や手術、ということになるわけですが、忘れてならないのは食事療法です。
毎日食事を食べるわけですから、どうせ与えるのであればそれぞれの子の病態に即したものを与えてあげたいですよね。
心臓病に適した食事としてのポイントはいくつかあります。

①よく食べてくれること
心臓病では、「悪液質」と呼ばれる栄養障害を生じて痩せがちだということが古くから知られています。
TNFやインターロイキンといった炎症性サイトカインの不適切な活性化により代謝が亢進して痩せてしまうと言われています。
現代の獣医学でも医学でも、原疾患がある状態でこの悪液質そのものを根本から改善させる治療法はありませんが、体重を減らさないことが予後(寿命)に影響するのではないかと考えられています。
心臓病の場合、体重が減るということは心臓の筋量も多少は減って心機能の悪化につながると考えられています。
従いまして、よく食べてくれるフードを与えて体重を減らさないことが大切です。

②塩分制限
生体には体液量を調節する仕組みが備わっています。体液量が少ない場合は腎臓からナトリウムと水の再吸収を促進して体液量を増やします。体液量が多い場合は腎臓でナトリウムと水の排泄を促進します。
この体液量のモニターは循環血液量で判断されます。心臓病では、水分とナトリウムが過剰傾向であったとしても、心臓のポンプ機能の低下により循環血液量が落ちてしまうため、体は体液量が少ないと勘違いしてしまいうっ血・浮腫傾向となります。
著しいうっ血・浮腫傾向に対しては利尿薬を使用しますが、利尿薬はカリウムも低下させてしまい、不整脈や食欲不振を招くことがあります。
食事による塩分制限は利尿薬ほどの即効性は期待できませんが、症状の軽減や予防が期待できます。

③オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は前述のTNFやインターロイキンの不適切な活性化を抑制してくれることがわかっています。悪液質の予防になるかもしれないのでオメガ3脂肪酸が配合されているフードが望ましいです。

④腎臓・膵臓への配慮
心機能低下による循環血液量低下により、膵臓や腎臓の血流量が落ちることが分かっています。
明らかな腎臓病を合併している場合は、腎臓病用フードが望ましいと思われますが、そうでない場合も腎臓を不必要に傷めないように、かつ筋肉量が落ちないように、良質な蛋白質が適切な割合で配合されている必要があります。
また、膵炎予防のために低脂肪であることが望まれます。


明らかな腎臓病を合併している場合は腎臓病用フードの方が良いですが、そうではない場合は上記の要件を満たすフード、つまりは
①おいしくて
②塩分控えめで
③オメガ3脂肪酸が配合されていて
④低脂肪でほどよい蛋白質含有量
であるフードが望まれます。

結局どれがいいのかと言いますと、具体的にはトップ画像のビルジャック社のリデュースファットとシニアがおすすめです。多くの循環器認定医の先生方が推奨されていらっしゃいます。
ビルジャックのフードはインターネット上でも購入可能ですが、動物病院で購入していただくのが最も安価に手に入ります。
例えばリデュースファットの800gを価格.comで調べてみると、9/3現在は最も安価でも¥3.091+送料¥660ですが、動物病院でのメーカー希望小売価格は税込み¥2,255です。
こちらのフードは動物ナビ等の当院患者さま用インターネット通販でのお取り扱いはできず、直接販売のみとなっております。
基本的に在庫は置いていないのでお取り寄せとなります。平日午前中の発注で翌日に入荷することがほとんどです。
動物病院で毎月、診察とお薬の処方、食事の購入を行うのが良いのではないかと思います。

近年、どの分野においても食事療法や腸活が重要性を増していると感じます。
皮膚疾患、消化器疾患、腎泌尿器疾患、循環器疾患、腫瘍性疾患など、あらゆる疾患でその疾患に適した食事やプレ/プロバイオティクスを与えることで、症状・生活の質の改善につながることを経験します。

食事管理も含めた総合的な慢性疾患の治療管理は、はら動物病院までご相談ください。