食欲増進剤の新薬 エルーラ
1個前の記事は、新しい薬が出たけど当院ではしばらく導入しないですよっていう記事でしたが、今度は即導入する予定の新薬の話題です。
米国では数年前から使われている犬猫用の食欲増進剤カプロモレリンがようやく国内販売されます。
米国では先に犬用が発売されて、その後猫用製剤も出てという流れでしたが、今回国内販売されるのは猫用のみです。
ただ、犬用だろうと猫用だろうと、有効成分はカプロモレリンで同じですので、小型犬であれば適応外使用は可能です。獣医師の判断のもとで飼い主様の同意があれば犬にも処方できます。
ただ、犬への投与量は猫の1.5倍なので、体が大きい子は割高になってしまうと思います。体重の重いわんちゃんは、犬用のカプロモレリン製剤のEntyceを輸入した方が良いでしょう。
当院では、現在まで食欲増進剤としてミルタザピンをよく使っており、食欲増進作用としては非常に優秀だと感じています。
しかし、カプロモレリンは食欲刺激作用だけでなく、筋肉量の維持が期待できるということから、大きな期待を寄せている新薬です。
腫瘍や腎臓病、心臓病などの慢性疾患による「悪液質」とよばれる状態では、ただ痩せてしまうだけでなく、脂肪よりも筋肉の減少が顕著になってしまうことが問題です。
悪液質の機序は人医学でも完全には解明されておりませんが、慢性炎症が関与していると考えられています。
様々な慢性病では、体重減少が余命と関連することが示唆されており、痩せないようにすることが生存期間延長につながります。
ミルタザピンとカプロモレリンは全く別の作用機序のため、併用も可能です。慢性炎症対策としてオメガ3脂肪酸の内服も併せて行うこともあります。
また、基礎疾患があって筋肉量減少を特徴とする体重減少が生じることを「悪液質」と呼びますが、特に病気ではないものの高齢になって悪液質と同様にやせ細ってしまうことを「サルコペニア」と呼びます。
獣医学領域では、サルコペニアに対するコンセンサスの取れたアプローチ法は存在しませんが、カプロモレリンが有効かもしれません。
進行してしまってからの改善は難しいので、まだまだ元気でも高齢犬猫で体重減少が認められたらはじめ時かもしれません。
エルーラによって、飼い主様と愛猫愛犬の幸せな時間が少しでも長くなってくれるといいなと考えております。
私ももちろんペットを飼育しており、看取った経験も当然ありますが、やっぱり食べてくれないのって辛いですよね。愛犬愛猫がおいしく食べてくれていることが飼い主の幸せであると心から思います。
当院では、食欲増進剤を積極的に使用しております。
慢性病で弱っていく愛犬愛猫に悲しい思いをされている飼い主様がいらっしゃいましたら、はら動物病院にご相談されることもご検討ください。