膀胱結石摘出 外陰部形成術
注意!
この記事の下部には少し痛々しい術後写真が掲載されています。
苦手な方は見ないようにしてください。
犬のストラバイト結石は正しい抗生剤選択で溶解するという記事を書いたばかりなのですが、上手く行かない場合やその他の膀胱結石の場合には手術で摘出することもあります。
トップ写真は摘出した膀胱結石です。
本例は一度内科的に溶解できた症例なのですが再発してしまい、同じ治療を行ったのですが今度は溶解してくれませんでした。
犬のストラバイト結石は基本的に細菌感染が原因となります。再発するということは、細菌感染しやすい原因があるということです。
膀胱結石の原因は細菌感染。では細菌感染が起こる原因は何だろうということを考えなければなりません。
本例の場合は外陰部低形成が原因ではないかと疑いました。
悪性乳腺腫瘍の予防を目的として、初回発情前に避妊手術を推奨している動物病院が多いと思います。(その他さまざまな疫学を考慮して避妊手術の推奨時期は動物病院によって異なります。また犬種(小型か大型か)などによっても変わります。)
発情期には外陰部が腫大します。発情が終わると腫れは引きますが初回発情前と比べると大きくなります。
初回発情前に避妊手術を実施すると、外陰部が大きくなる刺激が一度もないまま成長するため、周囲の皮膚に外陰部が隠れてしまう状態になることがあります。
このことにより、皮膚の細菌が外陰部から尿路に感染しやすくなり、再発性の細菌性膀胱炎・ストラバイト結石症を引き起こすことがあります。
治療としては、まずは内科的にホルモン剤を2週間程度内服します。人工的に発情に近い状態にすることで外陰部を大きくさせることを試みます。しかし、女性ホルモン剤は貧血などの副作用があるため、通常用量で上手く行かない場合に増量したり投与期間を延長することは推奨されておりません。
その場合は外科的治療を考慮します。
具体的には外陰部と肛門の間の皮膚と皮下組織を逆U字状に切除して縫合し、外陰部を露出させます。
以下のようになります。
左写真が術前です。この後肛門を巾着縫合してもう少ししっかりドレーピングしてから手術しています。
赤丸部分が外陰部ですが、ほとんど見えないですね。
右は術後2日目の術創周囲の写真です。外陰部がしっかり露出していることがわかります。
本例は再発した結石が内科的に溶解できず、またホルモン剤の内服でも外陰部が大きくなってくれなかったため、膀胱結石の摘出と外陰部形成術を同時に実施しました。
これで本当に再発しなくなるのかは今後の経過を見る必要があります。
再発性の犬の細菌性膀胱炎・ストラバイト結石は外陰部低形成が原因かもしれません。
愛犬の繰り返す膀胱炎でお困りの飼い主さまは、はら動物病院までご相談にいらしてください。