猫の誤食時に成功率が高い催吐法とは

症例数は少ないですけど、たまにありますよね。猫ちゃんが異物を食べてしまう誤食。
腸で閉塞してしまうと手術です。当院でも手術した子がいます。
https://hara-ah.org/2025/01/28/%e7%95%b0%e7%89%a9%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e8%85%b8%e9%96%89%e5%a1%9e%e3%80%80%e2%80%bb%e6%b3%a8%e6%84%8f%ef%bc%81-%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%83%88%e3%83%83%e3%83%97%e3%81%ab%e8%87%93%e5%99%a8%e5%86%99/
異物を誤食したら動物病院ではどうするの?
可能なら吐かせます。催吐処置と言います。
ただ、誤食後長時間経過していると既に腸に流れていて意味がない可能性がありますし、細くて尖っているようなものや、発砲するもの、揮発性の毒物などは対象外です。
誤食自体はわんちゃんが圧倒的に多いのですが、わんちゃんは催吐処置の成功率が高く、誤食して短時間でまだ胃にあるなら大抵お薬で吐かせることができます。当院では、止血消炎剤のトラネキサム酸の急速静注を第一選択としており、80-90%程度はそれで催吐できていると思います。
しかし、猫ちゃんは同じ薬を使っても上手くいかないことがほとんどです。その他にヒドロモルフォンという薬が75%程度の成功率という論文があるようですが、実際の現場ではそこまで高い成功率ではないようです。
猫で成功率が高い催吐法は?
このように猫ちゃんを吐かせるのは大変難しいのですが、昨年有望な論文が出ているようです。
非常に症例数が少ないレポートなので、もう少し実際の検証が必要ですが、デクスメデトミジンの経口~経口腔粘膜投与により、6頭中5頭で催吐処置に成功したそうです。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11156238/
デクスメデトミジンは、古くからあるデクスメデトミジン+レボメデトミジンが等量配合されている製剤から、活性が低いレボメデトミジンを取り除いた製剤で、動物用医薬品としては比較的新しい薬です。
当院では、猫ちゃんの去勢手術にメデトミジン(デクス+レボ)を使っておりまして、デクス製剤が出たので一旦は切り替えました。しかし、換算量で使用しても嘔吐が強く出て鎮静がかからない子が続いてしまい、元のデクス+レボの製剤に戻しました。
確かに良くも悪くも、良く吐く製剤というイメージなので、催吐剤としては上手くいきそうな気がします。今回の論文は、経口(経口腔粘膜)投与なので、筋肉注射しなくて良いのも猫ちゃんに優しくて良いですね。
鎮静薬で嘔吐して誤嚥は大丈夫なのか?と心配される飼い主さんもいらっしゃると思いますが、猫では誤嚥性肺炎は極めて稀です。犬では鎮静がかかるような催吐薬は使わない方が良いと思いますが、猫ならリスクは低いです。(もちろんリスクがゼロとは言えません)
実はこの論文内で触れられている馬用メデトミジンゲルを猫に使用した論文の方が8頭中8頭嘔吐で催吐率100%なのですが、日本では販売されていないですし、注射する場合に比べてかなり高用量で使っており、これを日本の臨床現場で参考にするのは難しいです。
デクスメデトミジン注射薬を論文の用量で使うのが良さそうです。
獣医師の皆さまにはご自身でリンク先の一次ソースを読んでから使用していただきたいので、ブログ本文には用量は書きません。
まとめ
猫ちゃんが異物を飲んでしまうと、吐かせるのは難しい。
でも、デクスメデトミジンの経口(経口腔粘膜)投与だと論文上は80%くらい成功している。
吐かせて出せるのは胃にある場合です。腸まで流れたら吐いても出ません。
異物を飲み込んでしまった場合や、その可能性がある場合は様子を見ずにすぐに動物病院を受診しましょう。
JR鎌取 浜野 京成千原線 学園前 おゆみ野 ちはら台エリアにお住まいの飼い主様は、はら動物病院までご相談ください。

