コリー/シェルティーに予防薬が危険?

必ずしも特定犬種に限りませんが、特に以下の犬種に関してはABCB1遺伝子変異を持つことが多いとされ、この遺伝子変異があると、薬剤は脳などの特定臓器に入らないようにする機構が働かず、重大な合併症を引き起こすことがあります。
・コリー
・ オーストラリアンシェパード 
・アメリカンシェパード
・ジャーマンシェパード 
・シェットランド・シープドッグ
・ オールド・イングリッシュ・シープドッグ 

動物病院業界の方はMDR1じゃないの?って思いすよね!思わないですか?何歳くらいで線引きされるんですかね。今はABCB1遺伝子って言うらしいですよ。ミリバールがヘクトパスカルになったり、ヘモバルトネラなんてヘモプラズマなんですか?マイコプラズマなんですか?何らか意味があって変わるんでしょうけど、混乱しますよね。
すいません。脱線しました。

昔は今みたいに何でもインターネットやAIで調べられなかったんですよ。だから、勤めた動物病院の院長や先輩から教わっるOJT教育がメインだったのですよね。
で、「コリーやシェルティーはMDR1遺伝子(現在の正式名はABCB1遺伝子)変異があるから、フィラリア予防薬はモキシ(モキシデクチン)じゃなきゃ危ねーんだよ」って教わったものです。

フィラリア症予防薬として使用される薬剤には、イベルメクチン、ミルベマイシン、モキシデクチンの3種類があります。
この中では確かにイベルメクチンやミルベマシンはABCB1遺伝子変異犬に高用量で神経毒性が出やすく、モキシデクチンが比較的安全なのはその通りです。
モキシデクチンはABCB1遺伝子変異犬に対し、通常量の30倍を投与しても問題ないそうです。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11229481/?utm
ミルベマイシンは、ABCB1遺伝子変異のあるシェルティーへの通常量の4.7倍の投与で、一過性の軽度な神経症状が出たという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35536118/
ただ、イベクメクチンは通常量の10倍投与でも問題なかったという報告があります。
https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/199/4/javma.1991.199.04.457.xml

確かにモキシデクチンの方が安全域は広いのでしょうけれども、いずれの予防薬も通常量での投与であれば問題ないと考えられます。

しかし、最近はノミダニ予防薬との合剤も数多く発売されています。ノミダニ予防薬のスピノサドはABCB1遺伝子がコードするp糖タンパクの働きを阻害する可能性が指摘されており、イベルメクチンやミルベマイシンとスピノサドの合剤をABCB1遺伝子変異犬に投与するのはややリスクがあるかもしれません。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0090955624057532?utm
ただ、ミルベマイシンとスピノサドの合剤である「パノラミス」は終売予定となっており、もともと使用していた動物病院も非常に少ないのではないかと思います。私は使用した経験がありません。

動物病院の口コミを見ていたらですね、「他の動物病院に行ったら、この予防薬はシェルティーには危険だって言われた!酷い!☆1」みたいな投稿を見たんですよ。当院のじゃないですよ。
パノラミスだった可能性もないとは言えないですけど(パノラミスだって禁忌ではない)、基本的に用法用量を守って使う分には問題ないわけです。
もちろん、パノラミスを処方されていて、もう少し安全性が高いのもありますよという話だったのかもしれませんが、しっかり学んでいて、イベルメクチンでもミルベマイシンでも常用量なら問題ないから処方していたかもしれない獣医師が非難されて、口伝の中だけで生きている獣医師が信頼を得ているということもあり得るよな、と思いましてこわいなと感じたのですよね。
「コリー/シェルティーにはモキシじゃなきゃ危険!イベルメクチンやミルベマイシンなんて禁忌!」という獣医師がもしいたらですね、その先生は少なくとも予防医療に関しては知識をアップデートできていないんです。コリー/シェルティーに自信を持ってイベルメクチンやミルベマイシンを処方できる獣医師の方が勉強しているんです。

1つの口コミからあり得る勝手な妄想でして、全然違う背景やストーリーがあるのかもしれませんが、口コミ投稿される際には、例え専門家から聞いたとしても一人の話を鵜呑みにするのではなくて、しっかり自分で一次情報に当たり、自分で判断するのが大切だと思います。
今はAIもありますので簡単に調べられます。でもAIの言うことを鵜呑みにするのではなくて、AIに一次情報のリンクを挙げさせて、一次情報を自分で読むことが大切です。
本稿も雑なまとめでしかないです。リンクを貼っていますので、何らかの根拠にする場合は当ブログではなくリンク先をしっかり読んでくださいね。