開業1年目の年末所感 ~当院がここにある意味~

2/20開業ですから1年経ったわけではないのですが、なんとなく年末の方が区切り間がありますよね。
開業1年目が終わろうとしています。
そこそこ動物病院が複数ある場所でわざわざ開業したわけですが、「こんなことでお困りであれば当院へ10選」というのを書いてみようかなと思います。

①前十字靭帯断裂の手術がしたい
前十字靭帯が断裂しているけれども、かかりつけの動物病院では手術ができない、もしくは現状最良とされるTPLO法ではなく関節外法しかできない、と言われた場合は是非当院にいらしてください。私が執刀するわけではありませんが、Amuse動物運動器外科サービスの高瀬先生に執刀していただけます。
緑区でTPLOが可能なのは当院だけかもしれないです。他にもあったらすいません。中央区や稲毛区なら他でもできると思いますが、高瀬先生ほどの症例数を執刀されている先生はなかなかいらっしゃらないと思います。全国各地の一次診療動物病院のみならず、□□動物医療センターというような名前の二次診療施設でも整形・神経外科の出張手術を執刀していらっしゃる先生に、当院で手術をしていただくことが可能です。
現在まで2症例が当院でTPLOの手術を受けています。

②かかりつけの動物病院と休診日の都合が合わない
かかりつけの動物病院さんが週休2日で利用しづらいとか、休診日の都合が合わない方は当院のご利用をご検討ください、当院は金曜と祝日が休診です。年末年始や夏季休業もありますが、当院の方がご都合がつきやすいようでしたら、是非ご利用ください。
土日は終日診療しています。

③自分の動物に何の薬を飲ませてるのかわからない
設備が整っている大きな動物病院だと、ヒトの薬局でもらうような薬の説明をお渡ししているところもあります。当院ではそこまではできませんが、診療明細に何の薬を処方しているのか記載しています。当院は24時間365日診療しているわけではありませんので、当院をかかりつけ動物病院としてご利用していただいている子が夜間や休診日に体調の悪化を起こすことはあり得ます。その場合に、他院のはじめて診察する獣医師は、何の薬を飲んでいるのかわからないと対処が難しくなります。私自身もしばしば困ることがあります。
しっかりかかりつけの先生とコミュニケーションを取っていただき、自分の動物が何の病気で何という名前の薬を飲ませたり外用したりしているのかを把握できる飼い主様はいいんです。全く問題ありません。でも、私は獣医師だからわかりますけど、覚えられます?ミコフェノール酸モフェチルとか、クロピドグレルとか...ややこしい。覚えにくい。ブデソニドなんて私もいまだにどこに濁点がついてどこにつかないのかよくわからないですもん。
当院で慢性疾患を治療中の飼い主様なら、診療明細書があれば何の薬を飲んでいるかわかります。
お薬の名前が覚えられない飼い主様は、是非当院のご利用をご検討ください。

④専門病院で専門診療をうけつつ、近くの動物病院をかかりつけにしたい
複数の動物病院を利用していることでかかりつけの先生に怒られて困っているというご相談を受けたことがあります。何かの行き違いなのではないかと思いますが、当院は眼科や歯科、腫瘍科疾患など必要に応じて専門診療が可能な二次診療施設をご紹介しておりますので、複数の動物病院を同時にご利用されることで困ることは特にありません。気兼ねなくご利用ください。

⑤かかりつけの先生がこわい
獣医師の中には、ペットの飼育・治療に関してあるべき姿が明確で、そこに対して邁進されている先生もいらっしゃいます。とても素敵なことだと思いますし、その方針に合う飼い主様にとっては、その先生が絶対の存在になると思います。
私は、千葉、東京、静岡、大阪、京都、兵庫とかなり広い範囲で、都市部から郊外まで幅広い地域での診療経験があります。
飼い主様の死生観というのは非常に多様で、例えば農村部では、餌付けしていた猫が出産した場合に、子猫は川に流してしまい、母猫だけ避妊手術に連れていらっしゃるというようなこともありました。
これを「ひどい」とか「間違っている」というのは比較的都市部に住む人間の傲慢でして、母猫のことはかわいがっていて、今後も面倒をみてあげたいお気持ちからそうされているわけです。餌付けしてあげられる頭数にも限度があります。このことは、独りよがりの正しさでは動物と飼い主様に寄り添うことはできないのだと考えさせられる大変貴重な機会になりました。
正しさというのはとても難しいです。正しさは相対的なものであるから大義がぶつかる戦争になります。もちろん悪意のある虐待とかはダメですよ。譲れない一線はありますが、私は絶対の正しさはないというのが基本的な信条で、決まったあるべき姿を目指すというよりは、より良い未来を一緒に模索するようなタイプです。
ぐいぐい引っ張ってほしい飼い主様には合わないかもしれませんが、先生の持論が強くてこわいなと感じるような方には当院が良いかもしれません。

⑥皮膚病が治らない
皮膚科の専門診療というレベルでは全くありませんが、他院でずっと同じ薬を2年間処方されつづけて全く改善しなかったという症例が当院の処方で早期に改善したような例はありますので、一度ご相談いただけると状態によっては改善するかもしれません。
当院は皮膚科専門医の伊從先生が主催されているFINAL ANSWER ACADEMYの認定動物病院です。

⑦慢性下痢が良くならない
慢性下痢の診断の最終ステップとしては主に腫瘍性疾患の除外を目的として内視鏡生検を行うことがあります。残念ながら現在は当院に内視鏡がございませんので診断の部分では二次診療施設にお願いすることがあります。
しかし、内視鏡生検前の診断項目が不十分な場合は当院で追加検査を行うことがありますし、内視鏡生検済みでいわゆる炎症性腸炎と診断されたけれども下痢が良くならないという場合に、現在の治療薬の追加変更をご提案して改善を認めることもあります。
追加検査を行うことが多いものとしては、ホルモン検査や酵素活性検査、ビタミン濃度の検査、アレルギー検査などがあります。
治療の追加変更に関しては、エビデンスのある整腸剤、食事変更(手作り超低脂肪食、低アレルギー食など)、ビタミン剤の内服(もしくは注射)、ステロイド剤の種類変更、免疫抑制剤の追加などを行う場合があります。

⑧猫の便秘が良くならない
猫ちゃんの巨大結腸症による便秘で、定期的な摘便や浣腸、下剤による治療を行っている場合、それらの治療で管理が上手く行っていない場合はもちろん、上手く行っているとしても当院に一度ご相談いただく価値はあると思います。
難治性の巨大結腸症でも、整腸剤を論文に基づく用量でしっかり使用すれば改善する可能性がかなり高いです。エビデンスのある整腸剤を論文の用量で使用するのが大事だと思います。
是非ご相談ください

⑨吐き戻し(吐出)の治療
胃や十二指腸からの嘔吐ではなく、食道からの吐出と診断されているわんちゃんで、食後に起立位を保つなどの対症療法や制吐剤(マロピタントやメトクロプラミドなど)や消化管蠕動促進剤(モサプリドなど)で治療を続けている場合は、別のお薬で症状が改善することがあるかもしれません。私自身は昨年知った方法なので、まだ広くは行われていない可能性のある治療法です。治療薬としては別の疾患に対しては以前から使っているお薬で、巨大食道症の一部に有効ということがわかってきたのが最近のことのようです。

⑩インターネットの情報と違うのが不安だけど動物病院で聞けない
インターネット上の情報は玉石混合なので、変な話もいっぱい書いてあります。獣医師の記名記事でも間違っていることは結構あります。いろいろ見ると不安になりますよね、でも動物病院で聞くとインターネットの情報なんて信用するなって怒られたり。
確かに、どうかなと思う情報もいっぱいです。最近見たのだと、堂々と獣医師が名前を出して、慢性腸症にコバラミンの内服投与は効果がないと書いてました。効果ありますから。エビデンスもちゃんとあるし。あとは、早期の避妊手術による乳腺腫瘍の予防効果に関していろんなところが記載していますが、結構いいかげんです。早期に避妊手術しましょうね、という結論は同じなので、細かいところを気にしない人は良いのかもしれないですけど、これの論拠となる1969年の論文に書いてあることは、「悪性」乳腺腫瘍の予防に関してであって、良性は含まれていないんですよ。また、未避妊の場合と比べての相対発生リスクを、単純に発生率と誤読して書いている情報が非常に多いです。とはいいつつも、実は私もつい最近まで、初回発情前の相対発症リスクは0.05%だと思っていました。0.5%の間違いでした。申し訳ない...

インターネット上などの情報をご覧になって心配な点があれば是非 教えてください。きちんと調べます。その場で明確な答えがわからない場合は、各分野の専門医にお伺いするなどして、後日LINEで回答します。根拠を明確にします。
細かいところをきちんと調べて明確にするのはわりと好きなので、いろいろ聞きたいのにな、という方は是非当院をご利用ください。重ねての注意事項ですが、その場では全部調べられないですよ。でも後日ちゃんと報告します。

当院では、獣医療情報を不定期にブログ掲載しておりますので、そういった情報もご覧いただき、多分野で情報の更新を欠かさない姿勢を評価いただけるようであれば、当院のご利用をご検討ください。

土日は稀に待ち時間が長くなることが出てきました。平日はこんな長文を書いているくらい暇ですが。
2024年もはら動物病院のご利用をよろしくお願いいたします。