肺動脈弁狭窄症 犬の先天性心疾患
画像は肺動脈弁狭窄のカラードプラ像です。(右傍胸骨大動脈起始部短軸像)
下方向への血流を示す青色血流が肺動脈弁を境に様々な色が混じるモザイクパターンを呈していることがわかります。
この部分の血流速を計測すると4.0m/sと中程度の高速血流が計測されました。
これをもって肺動脈弁狭窄症と診断できます。
この子は混合ワクチン接種で来院された初診のわんちゃんで、身体検査で心雑音が聴取されたためエコー検査を行いました。
肺動脈弁狭窄症は一般的には先天性の心疾患です。
私が診察するより前の時点でどうだったのかを知る術はありませんが、通常は生まれつきの心奇形であり最終的には右心不全に進行します。心臓の構造変化が重度になる前に当院にいらしていただき本当に良かったと思います。
肺動脈弁狭窄症は、先天性心奇形の中では比較的予後良好な疾患で、狭窄の重篤度や狭窄のタイプにもよりますが、生存期間中央値は5~7年程度とされています。
先天性心疾患の中では軽症な部類とはいえ短命になってしまう可能性が高い疾患ですが、カテーテル治療等により生存期間の大幅な延長が期待できます。
狭窄のタイプとして弁尖の融合であるtepeA・弁輪径の低形成であるtypeB・中間型があり、狭窄部の状態によりバルーン拡張術、開胸術、ステント挿入術などの外科治療を行うか、心筋保護のための内服薬のみの治療とするかを検討することになります。
当院では心血管外科治療はできないため、状態の精査も含め大学病院をご紹介いたしました。
飼い主様が何も知り得ないまま右心不全が進行し、気づいた時には既に外科介入は不可能という状況になりかねなかったため、異常の発見と診断、適切な二次診療施設のご紹介ができて良かったと考えています。
症例はまだ診断がついただけであり、これから本格的な治療となりますので、飼い主様が今後も当院をご利用していただけるのであれば、大学病院としっかり連携して診療にあたってまいります。
このように、当院では一見健康に見える動物の予防診療でもしっかり身体検査を行い、異常が発見されれば必要な検査をご提案し、病気の早期発見・早期治療につなげております。
予防接種やノミ・マダニ予防、フィラリア症予防薬等のご用命から体調不良での診察まで、かかりつけの動物病院として、是非はら動物病院をご利用ください。