超小型犬の前肢骨折


2.2kgのトイプードルちゃんが前肢挙上を主訴に受診されました。
レントゲン検査では、橈尺骨の骨幹部横骨折を認めました。
小型犬の四肢の骨ってとても細いんです。イメージとしては割りばしくらいです。
四肢が細い分体重も軽いですけど、犬として考えれば2kgってとても軽いですが、2Lのペットボトルくらいと考えると重く感じます。
2Lのペットボトルの四隅に割りばしを固定して、椅子から落とすことを想像してみましょう。割りばしはどうなりそうですか?折れると思いませんか?
実際には関節や筋肉が衝撃を吸収しますからそう単純ではありませんが、でもリスクの高さはイメージできると思います。
小さい小型犬はかわいいですよね。永遠の子犬という感じです。
日本の住宅事情に適しておりますし、小さいと食費もお薬代も安くなります。かわいいだけでなくメリットも大きいです。
でも、あまりに小さい子は骨折のリスクが高くなるんだということは知っておきましょう。
具体的な対策としては、ペット保険に入ることをおすすめします。
もちろん骨折しないように注意することが大切なのは言うまでもありませんね。
高いところから飛び降りてはいけませんが、そんなことは当たり前で超小型犬の飼い主さんは皆さん気をつけていらっしゃいます。
それでも折れてしまうんです。
そんなに高さのないリビングにあるソファの座面から自分で飛び降りてとか、飼い主様がしゃがんだ状態で膝の上にいた子が自分で地面に飛び降りてとか、それくらいで骨折してしまいます。飼い主さんが気をつけられる範囲を超えていると思います。
ですから、超小型犬を飼うならお迎え時からペット保険に入りましょう。骨折の手術は高額です。もちろん技術料もありますが、プレートが1本数万円、ネジが1本数千円しますので、原価もかかるんです。
そして、適切な整形外科手術が可能な動物病院をかかりつけにしておくと安心です。
いざ骨折した時にかかりつけ動物病院では手術ができず、紹介されて遠方の○○動物医療センターまで行くのは大変です。
当院では、整形外科手術は基本的に高瀬雅行先生にご執刀をお願いしています。(症例の状態等により別の獣医師に依頼することもあります)
高瀬先生は全国の動物病院で月間40~60例ほどの整形/神経外科手術を執刀されており、その中には埼玉動物医療センターさんやエルムス動物医療センターさんなどの二次診療施設も含まれます。獣医師向けのセミナーにもご登壇される指導医レベルの先生です。
今回の症例は、このまま上手く経過してくれればネジの間引きなどの抜釘手術は不要ということでした。
新潟や沖縄など、全国各地の動物病院で整形外科手術をご執刀されていることもあり、基本的に1回の手術で完結できるようにしているということでした。
骨折のプレート固定術の強度が高すぎる場合、骨の癒合後にネジの間引きなどで固定力を落とす必要が生じます。そのままだと骨が萎縮(ストレスシールディング現象)してしまうからです。逆に強度が弱すぎるとプレートが折れてしまいます。適切な強度となるようなプレート選び・スクリューを入れる場所・数の選択が大切です。できるだけ長いプレートを用いて、なるべく空穴を作ることが良いプレート固定とされています。
本例は幸運にも受傷翌日に手術を実施することができました。
骨折はもちろん早めの手術が望ましいものの、特に閉鎖性単純骨折の場合は緊急に手術を行わなずとも予後への影響がほとんどないため、外科医の都合によっては手術の実施まで数日~1週間程度かかることもあります。
軟部組織の保護と症例が足を使いづらくするためにしばらく包帯処置を続けますが、手術翌日には骨折した足をついて歩いてくれていました。
いざというときに安心な、はら動物病院を是非ご利用ください。