レントゲンでのVHS(椎体心臓サイズ)正常範囲は犬種によって違います

寒くなってきましたね。
動物と一緒に暖まりたいところですが、うちのぽんちゃんは抱っこさせてくれなくて悲しい...
さて、ぽんちゃんのことは置いておいて、今回はわんちゃんの心臓の大きさに関しての投稿でございます。
冬は動物病院にとって健康診断の季節です。
多くの動物の健康診断(わんにゃんドック)を実施しておりますが、VHS法で心臓サイズを測定すると基準値を超える子が非常に多くてですね、調べてみると犬種によってVHS法での正常値は大きく異なることがわかりました。
今までも、犬種によるばらつきがあって、特にウィペットなどのサイトハウンドでは大きい、くらいのことは知っておりましたし、その他の所見や心エコーを踏まえて判断していたのですが、調べてみるとかなり多くの犬種別VHS参考範囲の論文が出ていました。
今回は、VHS法での心臓の大きさの評価に関して一緒に勉強しましょう!
VHSとは?
VHS法は、椎体心臓サイズと訳される胸部レントゲン ラテラル(横向き)像での心臓の大きさの測定法です。
動物では、VD像でのCTR(心胸郭比)の個体差が大きく、あまり有用ではありません。
このため、レントゲン上での心臓の大きさの指標としてはVHS法が最もよく使われています。
トップ写真をご覧ください。
基本的には右下ラテラル像での気管分岐部から心尖部への長軸線(紫色の線)を引き、それに直行する短軸(緑色の線)も測定します。
この長軸線と短軸線が第4胸椎から何椎体分かというのを小数点以下1桁まで測定したものがVHSです。
トップ写真の黄色線はVLASという左心房の大きさの指標を測定している線です。
VHSの正常範囲
VHSの全犬種正常範囲は9.7±0.5とされています。
また、小型犬で多い僧帽弁閉鎖不全症での内服開始基準(stage B2)としては10.5より大きいという基準がありますので、10.5をカットオフとしている動物病院も多いのではないかと思います。
じゃあトップ写真の子は?
トップ写真のVHSは11.1です。
10.2どころか10.5も明らかに超えていますので心拡大ですね!となるかと言えばなりません。
何故ならこの子はミニチュアシュナウザーだからです。
犬種別VHS参考基準値
論文により参考基準値としてRI(正常例の中央95%)を出しているものと、中央値±SD(標準偏差)で出しているものがありますが、ミニチュアシュナウザーのVHS参考基準値は9.7~12.1です。中央値が10.9ですので、平均的なミニチュアシュナウザーのVHSは10.5を超えているわけです。
これは何でかと言いますと、ミニチュアシュナウザーは体格に比して椎体が短いのです。心臓が標準的でも椎体が短いのでVHSは大きくなります。
ミニチュアシュナウザーだけでなく、純血種では国内No.1の人気犬種トイプードルは9.94±0.60ですし、ポメラニアンは10.5±0.9です。日本での飼育頭数が多い小型犬種でも全犬種の正常範囲が全くあてにならない犬種があります。
VHSは参考値です
純血種ならこういったデータが出ていることが多いので、犬種別参考基準値を参照することができますが、最近はミックス犬も多いですよね。
また、純血種だって標準的な骨格でないと正常範囲はあまりあてにならないかもしれません。
レントゲン検査でのVHSは参考値的に扱い、基本的には心エコー検査を基準にするのが良いと思います。
当院のわんにゃんドックでは心エコーを含むコースを設定しておりませんが、オプションとして同時に実施可能です。オプション検査は通常診療料金の10% offで実施しています。
聴診で心雑音を指摘されているけれども、かかりつけの動物病院では心エコーができないと言われてお困りの飼い主様がいらっしゃいましたら、はら動物病院にご来院ください。

