アジソン病の注射剤

アジソン病とは、副腎機能不全のことです。
副腎からの糖質±鉱質コルチコイドの分泌不全が起こることで、様々な症状を呈します。
酷いと虚脱、そこまで行かない場合は嘔吐・下痢・元気消失など、その他の様々な病気でも生じる症状を呈します。動物病院で、一般的な血液検査やレントゲン・エコー検査等を行っても何も悪いところが見つからないけれども、何かいつも調子が悪いとか、下痢や嘔吐を繰り返すという場合には、アジソン病の検査(ACTH刺激試験など)を行うことがあります。
ACTH刺激試験を行いさえすれば、診断や除外は比較的容易な疾患です。グレーゾーンで迷うということは少ないです。
迷う場合はコルチゾール/eACTH比の測定や頭部MRI検査を行うこともあるかもしれません。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4895572/

さて、このアジソン病の治療ですが、国内で購入できるのは以下の内服薬のみです。
糖質作用と鉱質作用の両方を持つ薬です。

一次診療の動物病院で多数の症例に出会う病気ではないので治療経験は多くはありませんが、この内服薬でそれなりに大きな問題はなく維持できる印象を持っていました。
しかし、この内服薬は犬で使うには糖質コルチコイド作用が強すぎて鉱質コルチコイド作用が弱すぎるのではないか、と言われ始めており、近年では国内の動物病院でもトップ画像の輸入薬の注射剤を使う動物病院が増えてきているようです。
糖質コルチコイドは抗炎症や抗ストレス作用を発揮します。鉱質コルチコイドは電解質バランスを整えて血圧の維持に重要な働きをします。

内服薬の場合、電解質バランスに主眼を置きすぎると糖質作用が強く出てしまい、多飲・多尿や腹部膨満、皮膚の菲薄化などの問題が出てしまうことがあります。それならばと糖質作用過剰の副作用を気にしすぎると、電解質バランスが正常化せず血圧の維持が不安定になるリスクを抱えてしまうことがあるようです。
確かにそう言われてみると、私は電解質バランスを重視していたので、もしかしたら糖質作用過剰な副作用が出ていたのかもしれない、と思い当たる過去の経験もあります。

輸入薬の注射剤は鉱質作用のみで糖質作用はありません。糖質作用は別途内服薬で補います。
糖質作用の調整と鉱質作用の調整を別々の薬で行うため、それぞれ個別に調整ができます。このことで、フロリネフ単剤で治療を行うよりも良好に維持できることが期待できます。

フロリネフのみでそれなりに維持できているものの、なんだがお腹が張ってきている/皮膚病が慢性化している/飲水量・尿量が多い、など、治療の満足度が高くない飼い主様で、別の治療法の話も聞いてみたいという方は、はら動物病院までご相談ください。

※輸入薬の注射剤は取り寄せに時間がかかる場合があります。