猫のワクチンは毎年打たなくてもいいって本当?

これは生活環境と体質によると思います。
ただ、当院では実際に毎年接種を推奨しないケースが多いです。どういうことなのか一緒に勉強しましょう!

結論というと絶対の真理みたいですけど、当院の方針を最初に述べます。
動物病院によって方針には違いがありますが、当院は以下の方針で猫ちゃんのワクチン接種を推奨してます。
当院の方針であって、これが絶対の標準ということではありません。

①ヘルペス/カリシウィルスの罹患リスクが高い室内飼育猫ちゃんの場合
トリミングサロンやペットホテルを頻繁に利用するなど、ヘルペス/カリシウィルスの罹患リスクが高い猫ちゃんには3種ワクチンの毎年接種を推奨しています。

②室内飼育で他の猫ちゃんとの接触がほとんどない場合
まずワクチン抗体価検査を推奨しています。
その結果、パルボウィルス抗体価が十分高値な場合には、ヘルペス/カリシウィルス抗体価が低値でもワクチン接種は行いません。
抗体価を必要な間隔で再測定して、抗体価が下がってくるならワクチンを接種します。

③外に出る猫ちゃんの場合
猫白血病ウィルス検査を行い、陰性の場合には4種もしくは5種ワクチンの毎年接種を推奨しています。

当院での診療の実態としては外に出る猫ちゃんのご利用がほとんどないため、以下は室内猫ちゃんでの①と②の方針に関してご説明いたします。

わんちゃんはですね、当院でも毎年接種している子が多いです。
当院で5種ワクチン接種をご希望のわんちゃんの飼い主様には、まずは免疫力の指標となる抗体価を測定して...という提案もしておりますが、結局は毎年接種をご希望になる飼い主さまが圧倒的に多いです。
何故なら証明書が必要だからですね。トリミングサロンやドッグランなどなど。
ワクチンをただ打ってあるかの証明書よりも、抗体価の証明の方がよほどちゃんとした免疫力の証明書になりますが、様々な場面で「ワクチンは接種していないのですが抗体価の証明書があって...」といちいち説明するのは面倒ですよね。
獣医学の専門家ではない一般の飼い主様が、これまた獣医学の専門家ではないトリマーさんやその他のお店の管理者の方に説明するのは大変だと思います。
ワクチン接種の証明書があった方が圧倒的に便利なんですよね。

ワクチンとは、弱毒化(生ワクチン)もしくは無毒化(不活化ワクチン。抗原性は維持)した病原体を接種して、生体に免疫力を作らせるものです。
ワクチンで獲得する免疫機構としては、抗体による液性免疫・免疫記憶したTリンパ球による細胞性免疫があります。また、免疫機構が働く場所による違いもあり、そもそも体内に入らないように鼻粘膜などで働く粘膜免疫と、体に入って来てしまった場合に働く血液中など機能する免疫とに分けられます。
つまり、ざっくり分類すると、免疫機構としての液性(抗体)と細胞性があり、働く場所として粘膜と血液があるので、2×2の4種類に大別できます。
この中で、当院のような普通の動物病院が利用できる商業ベースの検査は血液の抗体の働きを数値化する抗体価のみです。
4種類の獲得免疫のうちの1種類だけですが、ワクチンによる獲得免疫を数値化することができます。

猫のコアワクチンは、パルボウィルス・ヘルペスウィルス・カリシウィルスの3種です。
しかし、血液の抗体価が実際の防御能と相関するのはパルボウィルスだけです。
ヘルペスウィルスの防御能には細胞性免疫が重要とされており、カリシウィルスの防御能には粘膜免疫が重要とされております。いずれも研究機関であれば測定できないこともないようですが、2025年現在、商業ベースで検査できるラボはありません。

犬のワクチンでも、レプトスピラワクチンは血液検査で防御能を評価することはできません。診断で使用する抗体価は顕微鏡下での凝集試験で、それは防御能を反映しないとかなんとかだそうです。
しかし、コアワクチン(全ての犬に接種が推奨されているワクチン)のジステンパー、パルボウィルス、アデノウィルスに関しては、血液検査での抗体価と実際の防御能の相関が確認されており、手軽にワクチンの効果を測定できます。
抗体価が十分高値なら接種しない、低値なら接種という判断でOKです。簡単です。しかし、実際にはほとんどの飼い主様が毎年接種しますが...

猫ちゃんのワクチン接種は、注射部位肉腫という悪性腫瘍を引き起こす可能性が指摘されています。
ごく稀な発生のため、それを恐れてワクチン接種しないというのは良くないと思いますが、無駄に接種を繰り返すのもまた良くないと考えています。
このため当院では、トリミングサロンやペットホテルを頻繁に利用するなど、ヘルペス/カリシウィルスの罹患リスクが高い室内飼育猫ちゃんには3種ワクチンの毎年接種を推奨しています。
当院をご利用の多くの猫ちゃんは、室内飼育でかつ他の猫ちゃんとの接触がほとんどないことが多いです。
こういった飼育環境の場合には、まず抗体価測定を推奨しています。
その結果、パルボウィルス抗体価が十分高値な場合には、ヘルペス/カリシウィルス抗体価が低値でもワクチン接種は行わないことを推奨しています。

パルボウィルスワクチンには強力な発症予防効果がありますが、ヘルペス/カリシウィルスワクチンの効果は、人間のワクチンで言うとインフルエンザワクチン程度です。
接種していないよりはマシかなくらいに考えましょう。
効果は不確実で免疫力を獲得できているのかの検査も難しいため、リスクの高い猫ちゃんに限っての接種が良いでしょう。

上記の考えから、当院では冒頭の基本方針としています。

しかし、もちろん飼い主様のご意向を伺って適宜調整しております。
また、動物病院によって地域性やご来院される動物の特性の偏りもあるため、動物病院ごとに方針が異なるのは当然で、それぞれの動物病院が来院される動物にとってより良いと考える方針を策定していると思います。
これはあくまでも当院の方針であって、絶対の正論ではないことを再度注意喚起いたします。

猫ちゃんのワクチン接種/ワクチン抗体価検査に関して、正しく選択するには以下の知識が必要です。

・ワクチンで防ぐことができる感染症のリスクがどのくらいあるのか
・ワクチンの副作用リスク
・ワクチンの効果
・抗体価検査結果の正しい解釈

この4点に関して、漏れなく正しい知識を有していなければ適切なワクチン接種はできません。

なんとなく毎年接種していませんか?そのワクチン接種はメリットよりもデメリットの方が大きいかもしれません。
かかりつけの獣医師としっかり相談してから予防接種を行うのかどうか慎重に検討しましょう。
千葉市緑区おゆみ野 中央区生実町エリアの愛猫家の皆さまで、適切なワクチン接種に関してしっかり相談できる動物病院をお探しでしたら、はら動物病院をご利用ください。