発咳が改善しない心臓病犬の治療を見直した例

循環器疾患に対しての適切な検査・評価・治療で発咳が改善した症例のご紹介です。
愛犬/愛猫の心臓病を指摘された場合、心エコー図検査を用いて評価をする動物病院で継続治療を受けることが大切です。
主訴(来院理由)
他院で心臓病と言われ治療しているが発咳が良くならない。
咳に対して様々な薬を使われたが改善しない。
当院での検査
・胸部レントゲン検査
心拡大の程度の把握や気管・気管支・肺などの呼吸器の状態の確認のため実施しました。
・心エコー検査
心臓病の診断、心拡大の程度の把握、循環動態の確認のため実施しました。
・血圧測定
血管拡張薬の使用の是非を検討するために実施しました。
暫定診断
左心房拡大による気管支圧迫、循環器治療が不十分なことによる肺うっ血傾向、慢性気管支炎等の複合的要因による発咳
治療
・ピモベンダン
他院で処方されているピモベンダンは同量継続としました。
・アムロジピン
心臓から血液が流れやすくするために血管拡張薬を追加しました。
・ブトルファノール
安眠できないほどの夜間発咳ということなので、頓服薬として咳止めを処方しました。
経過
エコー画像は←が治療後で→が治療前です。
・三尖弁逆流の低下

本例は2群の肺高血圧症が疑われる状況です。
僧帽弁閉鎖不全症が重症化すると肺から左心に血流が流れづらくなります。その結果三尖弁逆流が生じます。
左心不全に対する治療強化で三尖弁逆流が低減しています。
・E波の減高

左室流入波形の早期波であるE波が下がっています。
左心室から大動脈に血流が流れやすくなって左心房圧が下がり、循環動態が改善傾向であることを示唆します。
・大動脈血流の改善

血流速波形の面積であるVTIは単位時間あたり血液がどのくらい動いたのかという指標です。
同一症例の血管径が短期間に大きく変化することはほとんどないため、血流量の指標になります。
大動脈血流のVTIが6.8cmから10.1cmに改善しています。
考察とその後の経過
本例はその後、ACE阻害剤の追加などで発咳を低減することができました。
僧帽弁閉鎖不全症による肺水腫発症前のstage B2の段階で、ガイドライン上の強い推奨があるのはピモベンダンのみです。
しかし、心臓病の内科治療は、①心臓の収縮力を高める強心薬、②心臓が拍出する先の血管を拡張して心臓の負担を軽減する血管拡張薬、③体液量を減らして心臓の負担を軽減する利尿薬 の3種類に大別されるお薬を組み合わせて行うものです。
心臓に関しては、心エコー検査でかなりの情報が得られるのに比べて、呼吸器の状態を無麻酔で評価することは非常に困難です。CTや気管支鏡など麻酔下でかつ特殊機器がなければ詳細な評価ができません。
当院では、まずは心臓循環器の状態を整えて、それでも改善しない発咳に対してはステロイド剤を使うことが多いです。
心臓循環器の状態をある程度整えられていることに自信が持てれば、ステロイド剤も積極的にしっかりした用量で使うことができます。
心臓病に伴う改善しない発咳でお悩みの飼い主様は、はら動物病院までご相談にいらしてください。

