2023年12月時点の当院のシャンプー・保湿剤

こんにちは。原です。
シャンプーとか保湿剤とかサプリメントとか、皮膚用製品で無限にあるんじゃないかっていうくらい大量にありますね。
動物のシャンプーや保湿剤は、被毛をきれいにという目的もあるのでしょうけれども、皮膚ケア剤でもあるわけでして、目的に合ったものを正しく使用する必要があります。ものによっては同じ目的で同等品質のものが多数存在しますので、最初に何を使うかはブランドに対する信頼感・価格などで選ぶしかないのでしょうけれども、獣医師に相談して決めていただくのが良いと思います。

今回は、現在当院に置いてあるシャンプー・保湿剤をご紹介します。今後取り扱う製品は増えて行くと思いますが、2023年12月現在の情報です。
以下、(動物用)医薬品ではないものも含まれますので、ここで説明する薬効はあくまでも私個人の理解するところであって、(動物用)医薬品として認可を取得しているわけではないものも含まれます。その点ご理解いただいた上でご覧ください。

1-1 マラセブシャンプー

最初にご紹介するのは動物用医薬品であるマラセブシャンプーです。
その名の通り、マラセチア菌を減らすためにも使用しますし、クロルヘキシジン2%配合のシャンプーは国内製品ではこれしかないので、細菌感染の皮膚炎の初期治療にも使うことがあります。
ちょっと前までは「これで調子よければずっと使っていればいいんじゃない?」と思っていましたが、それはあまり良くないみたいですよ。
洗浄・殺菌力が強い分肌荒れしてしまう子も多いみたいなので、増悪期のみの使用にしておきましょう。

※国内で販売されているクロルヘキシジン2%配合シャンプーは、他にマラセブのジェネリックであるマラセキュアシャンプーがありました。

1-2.メディダームシャンプー

有効成分「ピロクトンオラミン」がマラセチアや細菌を抑制します。
マラセブシャンプーほど強力な殺菌効果はない印象ですが、皮膚への刺激性が少ないです。低刺激で消毒効果のあるシャンプーをお求めのあなたに最適です。維持期の長期使用に良いと思います。

1-3.ケラトラックスシャンプー

有効成分のサリチル酸が余分な皮脂や角質の除去、抗菌作用を示します。
サリチル酸は、ヒトのニキビケア用品のプロアクティブの主成分として有名です。
フケが多い乾性脂漏やベタベタ皮膚の油性脂漏の子に使います。

トップ写真の通り、他にもシャンプー剤は置いていますが今回はこの3種類のご紹介にとどめます。

ところで、シャンプーって洗浄剤ですよね。低刺激とか保湿成分配合などありますが、洗浄するということは多少なりとも肌にダメージが生じます。ですので、シャンプー後は保湿剤を使った方が良いと思います。その昔は消毒シャンプーの後に低刺激シャンプーなどという不思議な二度洗いが広く行われていましたが、良い保湿剤がなかったので仕方がなかったんだと思います。今はいろいろ良い保湿剤がありますので、皮膚の保護のためには保湿剤を使いましょう。

ただ、特にこの乾燥する冬場にそんなにシャンプーはしなくて良いのではないかという話もありまして、次に保湿剤情報を記載しますが、保湿浴剤のみでも良い場合もあるようですよ。

2-1.ダーマモイストバス

動物用保湿剤では、拡散効果のあるピペット剤というものもありますが、基本的には塗ったところだけが保湿されるわけです。
皆さんご自身は全身に保湿剤を塗られていらっしゃいますか?私は男なのもあって顔と手だけですね...全身に塗るのは大変です。
小型犬は人より小さいですが、被毛がありますからね。やはり全身に塗るのって難しいですよね。
そこでこの製品です。全身をセラミド保湿してあげられます。

ペット用バスタブが必要にはなりますが、首までつかる必要はないのでわきの下あたりまでつかるレベルにお湯(38℃程度)をはります。可能ならメーカー推奨量の2倍のダーマモイストバスを混ぜます。浴槽に入れる前にかけ湯して、軽く汚れを落とすのとお湯の温度にわんちゃんを慣らします。その後湯舟に入れて背中には手でお湯をかけてあげ、顔はガーゼや軟らかいたタオルを用いて湯舟のお湯で拭いてあげます。入浴時間は5-10分程度です。入浴後はシャワーで流したりはせずに、そのままタオルドライをします。短毛なら複数枚のタオルでしっかりタオルドライのみで良いでしょう。長毛種も複数枚のタオルでなるべく水気を取って、ドライヤーは極力短時間になるようにしましょう。
多少の汚れはやさしく落ちるオイルが配合されているので、乾燥肌で臭いが気にならない子はシャンプーせずにこの入浴のみでも良いようです。もちろんシャンプー後の保湿としての入浴もおすすめです。

ただ、保湿目的なので被毛はややしっとりめの仕上がりで、さっぱりサラサラにはなりません。
大型犬への使用は難しいと思いますが、皮膚トラブルを抱える小型犬には非常におすすめです。入浴の目安は週1回です。
メーカー公式の使用法動画はこちら

2-2.リゾペール

新機能素材LYZOX配合の保湿剤です。
LYZOXに関してはこちら
リンク先を見ていただいておわかりの通り、もともとヒト用のスキンケア用品としては開発されたもので、そのLYZOXを用いた動物用の保湿剤がリゾペールです。
抗菌成分配合の保湿剤なので、皮膚の常在細菌叢の乱れで膿皮症(湿疹など)やマラセチア性皮膚炎(特有の臭いが出るベタベタ皮膚炎)になりやすい子におすすめです。
スプレータイプで使いやすいですが、しっかり被毛の根本からつけないと皮膚まで届きにくいのと、サラッとした液状保湿剤の保湿力は軟膏などに比べると弱いので、十分な量を高頻度に(1日2-3回)使用することが大切です。

2-3.FINAL ANSWER NO.2スキンケアスプレー

獣医皮膚科専門医の伊從先生が開発された、エリスリトールという糖アルコール配合保湿スプレーです。
糖アルコールで有名なのはキシリトールですね。ヒトでは歯に優しいガムが販売されていますね。抗菌作用があるので歯に優しいと広く使われています。しかし、キシリトールは犬に対して毒性があり、低血糖や肝障害を引き起こします。
犬に毒性がないキシリトールに似た物質がエリスリトールです。
FINAL ANSWER NO.2スキンケアスプレーは、皮膚常在細菌の善玉菌には悪影響を及ぼさず、悪玉菌のブドウ球菌のみを抑えてくれる特徴があります。
おすすめする対象はリゾペールと同じで細菌・マラセチアが増殖しやすい子です。

FINAL ANSWER製品はメーカー直売もしくは認定動物病院でしか手に入りません。メーカー直売はインターネット通販なので手軽に手に入りますが、アトピー性皮膚炎とは様々な要因が関与する病態で、それぞれの要因に対しての治療アプローチを組み合わせることが推奨されておりますので、動物病院でご相談いただくことをおすすめします。

2-4.アフロート VET モイスチャライズ

個人的に最初に使い始めた保湿剤で、今でも良い製品だと思います。セラミド系保湿剤です。
犬アトピー性皮膚炎では、見た目に皮膚炎を生じていない部位でも水分蒸散量が増えて乾燥しやすい状態になっており、その原因が細胞間脂質であるセラミドの減少と言われています。ヒトのボディーソープのCMなどでも盛んにセラミド配合ということが謳われておりますので、耳なじみがありますよね。
日常使用しやすい泡状フォームタイプと、コスパの良い希釈タイプがあります。希釈タイプはシャンプー後のかけ流し用や、別途スプレー容器を用意して水道水で10倍希釈して使用も可能です。(希釈した場合は1週間以内に使用)
フォーム剤は使いやすいですが、保湿力は軟膏などに比べれば弱いので、十分量を1日2回以上使いましょう。

今回はこんなところにしておこうと思います。
最初の集合写真に載っていてご紹介していない製剤も多数ありますが、このように様々なケア用品を揃えて皮膚科診療にあたっております。
冬季はアレルゲンの飛散が少ないため、アトピー性皮膚炎は軽快する季節です。しかし、その一方でお肌は乾燥しがちになります。
カサカサ肌のまま、アレルゲンが多くなる春を迎えると、多数のアレルゲンが皮膚の中に入ってしまい、急激にアレルギー症状が酷くなります。そうすると、まずはその激しい免疫異常を抑えないとスキンケアどころではなくなります。
今のうちにしっとり健康なお肌でバリア機能を整えて、来るべき春に備えましょう!

アトピー性皮膚炎の治療は、外用スキンケアだけでなく内服サプリメント(脂肪酸、整腸剤)や、免疫異常に対するお薬(内服、外用、注射)を組み合わせて行います。
シャンプーと保湿剤の一部のご紹介ですらこのボリュームなので、ちょっと筆が重いですが気が向いたらそのあたりのご紹介記事も作成しようと思います。