犬の皮膚湿疹
少しずつ暖かくなってきましたね。
過ごしやすくなってきましたが、気温や湿度が高くなると菌が繁殖しやすくなります。
ワンちゃんの皮膚に赤みのある丘疹ができていたり、フケを伴う皮膚炎が認められる場合は膿皮症が疑われます。
膿皮症とは、皮膚の細菌感染症で、ワンちゃんで最も一般的な感染性皮膚炎です。
細菌感染なので、一昔前は抗生剤の内服処方が定番治療でした。今でも効果としては即効性もあって有効性が高い治療です。
ただ、現代社会ではSDGsが大切です。長期的に持続可能な治療/持続可能な社会を作って行かなければなりません。
抗生剤を飲めば、おそらくすぐ直ります。とりあえずは。でもまた再発します。で、また抗生剤飲ませます。そのうち効かなくなります。感染症とは言うものの、皮膚にもともと存在する常在菌の増えすぎが原因のことが多いのです。全部殺菌してきれいサッパリお終いとはならないのです。増えすぎた菌は減らす必要がありますが、ゼロにはなりませんし、ゼロにしてはいけません。皮膚も腸内環境と同じで細菌叢の多様性が保たれていることが大切です。
また、わんちゃんの皮膚に生じた耐性菌が飼い主さんにも影響するかもしれません。飼い主さんが細菌感染症になった場合に、ワンちゃんで使った抗生剤が効かないなんてこともあり得ます。こわいですよね。
ですから、人医療と同様、動物医療でも抗生剤の適正利用が求められるようになってきています。不必要な抗生剤投与は耐性菌の原因となり、動物と人間に悪影響を与える可能性があります。
じゃあどうするか。
当院では、軽度な膿皮症の治療に対する第一選択は消毒剤です。0.5%クロルヘキシジンを毎日外用することと、シャンプーを週1回程度行うことをおすすめしています。
抗生剤と違って、消毒剤に対しての耐性が生じることはほぼないと考えられています。
シャンプー剤は、クロルヘキシジン配合シャンプーをおすすめすることもあれば、低刺激シャンプーをおすすめすることもあります。
シャンプーは毛流れに逆らわず、皮膚を傷めないように行うことが大切です。
クロルヘキシジンの高濃度製剤を院内で自家希釈して処方する場合、希釈操作によって失活しやすくなる可能性があるそうです。そこで当院では、はじめから0.5%や0.05%に調整されている低濃度製剤を処方し、そのままお使いいただくようにしています。
消毒剤はその濃度や有機物の存在によって効果が変わりますので、絶対にこれで治るとは言い切れませんが、消毒剤としてのポテンシャルは100%発揮されるはずです。
当院の比較的軽度な膿皮症治療は、
①0.5%クロルヘキシジン外用+シャンプー
②抗生剤(フシジン酸ナトリウムなど)軟膏の外用
③抗生剤(セファレキシンなど)の内服
の順に進めることが多いです。
※0.5%クロルヘキシジンで肌が赤くなる場合は、別のシャンプーにしたり低濃度の外用製剤を使用したりもします。
膿皮症を繰り返す場合には、犬アトピー性皮膚炎や甲状腺機能低下症などの基礎疾患が隠れている場合が多いですので、そのあたりの検査もしっかり行うことをおすすめしています。
よくある病気こそ治療法のアップデートを怠らず、安心してかかりつけ動物病院にしていただけるように精進してまいります。
皮膚疾患も、はら動物病院にご相談ください。