リブレラ/ソレンシアの市販後有害事象報告の現状 2026

変形性関節症に対する安全性の高い鎮痛薬として登場したのが リブレラ/ソレンシアです。
これまでの内服鎮痛薬はNSAIDsが主流で、胃腸・腎毒性などが問題になり高齢動物での長期使用が難しい面がありました。
それに対して抗NGF抗体薬のリブレラ/ソレンシアは代謝に肝腎を介さないですし、NSAIDsで胃腸・腎毒性の原因となるCOX阻害作用はありませんので、老齢期に安心して使える慢性関節炎治療薬として期待されています。
日本で販売承認を受けてから本稿執筆現在で、もうすぐ4年くらいだと思います。
リブレラ/ソレンシアに関する市販後有害事象報告の現状と、当院での適応に関してご説明いたします。
抗NGF抗体薬とは
NGF(神経成長因子)は、変形性関節症において痛みや炎症の増幅に関与しています。
このNGFに対する中和抗体がリブレラ/ソレンシアです。
人間用はないの?
そもそも抗NGF抗体薬は人体薬として開発されていました。
しかし、臨床試験でごくまれに関節破壊を伴う急速進行性関節炎が発生することが明らかとなり、現在も上市されていないと思われます。
特にNSAIDs(ロキソニンなど)との併用でリスクが高まるそうです。
ソレンシアの現状
ソレンシアは猫用の抗NGF抗体薬です。
日本では上市後に死亡例の報告が相次ぎ、SNS等で危険な薬扱いされておりましたが、現状で死亡リスクを高める薬なのかどうかは不明です。
高齢期に使用する薬は、診断済み/未診断の併発疾患や併用薬が多く、また、動物医療では死因の厳密な究明がされないことも多いため、ソレンシアを使った症例の死亡がソレンシアと因果関係があるのかを証明するのは困難です。
ソレンシアに関して、市販後の有害事象報告から副作用の可能性が高そうなのは皮膚症状です。
以下の論文では、ソレンシアの有害事象としてシグナル強度が高かったのは、皮膚潰瘍、特定不能の皮膚障害、特定不能の皮膚病変、注射部位の疼痛、皮膚炎および湿疹であると報告しています。
https://academic.oup.com/jvim/article/40/1/aalag003/8472806
私としては、有害事象報告の中で副作用の疑いが強いのが皮膚症状であることから、ソレンシア投与と死亡の因果関係を強く主張するのは無理があると考えます。
今のところソレンシアは比較的安全な薬だと考えて良いのではないでしょうか。
人で承認が取れない原因となった急速進行性関節炎に関しても、猫ではソレンシア投与との関連を疑うような報告は今のところないようです。
猫ちゃんは、認可されているNDAIDsの投与期間がたったの5日間ですから、ソレンシアは老齢期にあまり動かなくなってしまった猫ちゃんに対して非常に有用な選択肢になります。
添付文書上、慢性腎臓病のステージ3以降の安全性は確認されていないと記載されていることには注意が必要ですが、安全性が確認されていないだけで、危険性が確認されているわけでもありませんので、そこはメリットデメリットを踏まえて、担当獣医師とよく相談して適応の是非を決めましょう。
リブレラの現状
リブレラは犬用の抗NGF抗体薬です。
リブレラに関しても、高齢期に使われる薬のため死亡リスクを高めるかどうかの評価が困難であるのはソレンシアと同様です。
しかし、リブレラの市販後有害事象報告の中で副作用の可能性が高そうなのは、運動失調、発作、麻痺、横臥、尿失禁、多尿、多飲などを含むその他の神経学的徴候であり、ソレンシアとは全く異なります。
もちろん副作用は稀な発生のようですが、死亡につながってもおかしくないような発作や横臥、神経異常が副作用として疑われており、人の急速進行性関節炎に類似の有害事象報告もごく稀な頻度ではあるものの上がっているようです。
安心してどんどん使いましょうとは言い難い印象を受けます。
また、犬の場合には猫と異なりNSAIDsの長期投与が可能ですし、副作用が少ない新しいタイプのNSAIDsであるガリプラント(EP4拮抗薬)もあります。
わんちゃんの老齢期の変形性関節症の治療は、様々な選択肢がある中でメリット/デメリットを踏まえて納得して愛犬に使用する薬を選択することが大切です。
まとめ
猫ちゃんは痛みの症状をわかりやすく示してくれませんが、老齢期に爪とぎをあまりしなくなって爪が分厚くなったり、寝てばかりなのは関節炎があるからかもしれません。あまり動かないと肥満になったり、飲水量不足から膀胱炎や膀胱結石のリスクが高まったりします。ソレンシアは比較的安全性が高そうなので、積極的に使用を検討しましょう。
わんちゃんの方が老齢期の慢性関節炎に対する鎮痛薬の需要が高いですが、一概にリブレラが安全で内服鎮痛薬の方がリスクが高いとは言えない状況です。メリット/デメリットに関して担当獣医師とよく相談してどの薬を使うのか検討しましょう。
これを書いた私自身が、リブレラ/ソレンシアは安心な薬と思い込んでいたところがありましたので、自戒を込めて本稿を投稿いたしました。今後は、特にリブレラに関しては慎重に投与の是非を飼い主様としっかりご相談したいと思います。
本稿で言いたいことはリブレラが危険だということではありません。副作用は稀で有効性が高い非常に良い薬です。しかし、リブレラに限らず絶対に安全安心という薬は存在しませんので、都度情報を更新して適切に薬剤を選択したいですね。

