下痢症状を伴う低蛋白血症の原因が腎臓だった症例

当院では、すでに治療中の疾患があっての転院でも、それまでの検査・治療内容をしっかり確認し、必要に応じて追加検査を行います。
今回は慢性症状が持続中で継続診療を依頼された症例に併発疾患が見つかり、むしろそちらが主病変なのではないかと疑う猫ちゃんを診察いたしましたのでご報告いたします。

2か月ほど下痢が続き他院を受診。
整腸剤や下痢止めでは症状の改善がなかったため血液検査やエコー検査を実施。低蛋白血症を認めたことからステロイド剤の投与を開始。内視鏡検査は実施していない。
ステロイド剤を内服してもなかなか血液検査のアルブミン値(栄養性蛋白質)が改善しないことから、注射での通院を行っていた。多少改善したが内服に切り替えるとまた数値が下がってしまい、注射での連日通院を続けることを提案された。
前医は遠くて通院が困難なので転院したい。
下痢症状はステロイド剤投与初日に治まり、その後再発はないということでした。

・血液検査
慢性下痢の場合、一般スクリーニング検査に加えて甲状腺ホルモンと膵外分泌活性(fTLI)の測定が推奨されています。
fTLIは12時間絶食での採血が必要なため初診時には実施できませんでした。
また、低蛋白血症は肝機能低下が原因/併発していることもあるため、食前と食後2時間の総胆汁酸濃度検査も推奨されていますが、こちらも絶食が必要なため検査できませんでした。
絶食が必須ではない血液検査は実施しました。(一般スクリーニング、甲状腺ホルモンなど)

・胸部/腹部レントゲン検査
治療開始前は腹水を認めていたということだったため、胸腹水の有無の確認のためや、関連する臓器に画像上の異常がないか確認するために実施しました。

・腹部エコー検査
消化管や腹部臓器に異常がないか確認するために検査しました。

・尿検査
低アルブミン血症は腎臓からの蛋白漏出でも起こります。慢性腸症と慢性腎症は併発することがあります。
腎臓からの蛋白漏出の有無を調べることを主な目的に尿検査を行いました。

・血圧測定
院内での尿試験紙で重度な蛋白の反応を認めたため、蛋白尿の原因を探る検査のひとつとして実施しました。

下痢を伴う低アルブミン血症だからといって、特に猫では下痢が低アルブミン血症の原因とは限りません。
原因の一部だとしても併発疾患があるかもしれません。
重度の低アルブミン血症の原因は5つです。①消化管からの喪失②出血③血管炎や腹膜炎による喪失④腎臓からの喪失⑤肝臓での産生低下(肝機能低下or炎症)
症状だけにとらわれず、漏れなく鑑別することが重要です。
慢性下痢と低アルブミン血症の原因を概ね網羅するために、前医での検査に加えて以下の検査を考えました。

・蛋白漏出性腎症
・慢性腸症

本例は尿蛋白クレアチニン比(UPC)=8.5という重度な蛋白尿を認めました。正常範囲は0.4以下です。桁の違う重度な高値です。
低アルブミン血症の本丸はむしろ腎臓からの漏出であることが疑われました。

蛋白漏出性腎症は症候群名であり、診断には腎生検が必要です。免疫複合体腎炎の場合には免疫抑制剤による治療が適応となります。
慢性腸症も慢性下痢ですと言っているだけの症候群名です。高繊維食や低アレルギー食に反応しない場合は消化管生検を行って診断をつけることが推奨されます。

大学病院などの二次診療施設で腎生検の実施が推奨される状況ですが、当院で可能な内科治療をご希望されたため治療を開始しました。
本稿執筆現在はまだ再診前のため、治療反応に関してはまだわかりません。

全ての診断・治療において言えることではありますが、治療反応が悪い重症疾患は特に、「診断が間違っていないか?」と立ち返ることが大切だと改めて感じました。

愛犬/愛猫の改善しない症状でお困りの飼い主様は、はら動物病院の受診をご検討ください。