皮膚病だからトリミングに行けない?→誤解です!

たまたまかもしれませんが、「皮膚病だとトリミングに行けない」と誤解されている飼い主様が続きました。皮膚病の子をトリミングサロンに出すのは「お店に迷惑がかかる」とか、「皮膚炎を悪化させてしまう」「病気をうつしてしまう」などの誤解をされていらっしゃる飼い主様は意外と多いのかもしれません。
しかし、むしろトリミングに出した方がいいケースがほとんどだと思います。
わんちゃんの皮膚病で一般的なのは、1.アトピー性皮膚炎 2.細菌感染 3.真菌感染 4.寄生虫感染 5.脂漏症あたりかと思います。それぞれ順に考えてみましょう。

1.アトピー性皮膚炎
アレルゲン物質が皮膚から侵入して炎症を引き起こします。また、細胞間脂質のセラミドが減少し、保水力が低下する結果として二次的に脂漏症になることが多いです。脂漏症になると細菌やマラセチア菌の増殖を伴うようになります。
アトピー性皮膚炎だけのごく初期の軽度な段階では、皮膚はキレイな状態のまま痒みだけが出るはずです。飼い主様が気にされるような見た目の皮膚症状が出ているということは、感染などの二次的な変化があるはずで、それはシャンプーが必要な状況だと考えられます。
2.細菌感染
細菌感染とは言うものの、もともと体に存在しない菌が感染症を引き起こすというものではなく、常在菌の中で特にブドウ球菌が増えすぎることが原因の場合が多いです。
増えすぎた菌は洗って落とした方が良いです。シャンプーが必要です。常在菌の過剰増殖であることがほとんどなので、他のわんちゃんに感染させてしまうということは基本的に考えなくて良いと思います。
3.真菌感染
真菌といっても、ベタベタ皮膚で増殖することが多いマラセチア菌の場合はやはりシャンプーが有効です。マラセチア菌も常在菌なのでトリミングサロンにお願いすることを躊躇う理由はありません。
ただ、痒みがない、もしくは軽度な痒みで局所的に被毛が抜けるような皮膚糸状菌症の場合は注意が必要です。これは人にも他の犬にも感染させてしまう可能性があります。シャンプーはすべきですが、トリミングサロンではなく自宅か動物病院で行う必要があります。
4.寄生虫感染
腰背部の皮膚病はノミアレルギー性皮膚炎の可能性があります。ノミが動物から動物に直接飛び移るということはほぼありませんが、環境を汚染してしまう可能性はあります。腰背部に限らず皮膚病があるのであればノミ・マダニの駆除/予防薬の投与は必須です。近年は薬剤が効きづらいタイプのノミも増えているようですので、イソオキサゾリン系薬剤がおすすめです。
※イソオキサゾリン系薬剤は、当院でよく処方するものだとネクスガードやブラベクトです。
5.脂漏症
体質的に、またはアトピー性皮膚炎に伴う形でなど、油分が過剰になってしまうベタベタの油性脂漏や、フケが過剰になる乾性脂漏があります。
過剰な油分や角質を適切なレベルに調整するため、クレンジングオイルを使用したりサリチル酸配合シャンプーなどを使用します。トリミングサロンでマイクロバブル洗浄をしてもらうとより良いかもしれません。

上記はシャンプーに関しての考察で、内服薬や保湿剤などその他の治療に関しては別に必要になることがあります。

これでわかることは、ノミ・マダニ予防薬をしっかり使っているのであれば、脱毛が主徴の皮膚病以外はトリミングに行った方が良いということです。自己判断でキャンセルする前に動物病院を受診して獣医師に相談しましょう。キャンセルしてしまうと再予約が遠くなってしまうかもしれません。キャンセルする前に動物病院で診察を受ければ処方されたシャンプー持参でトリミングに行けます。
また、当院ではカットはできませんが、小型犬の皮膚病治療目的のシャンプー(薬浴)は承ります。ペット保険の種類や契約にもよりますが、治療目的の薬浴は基本的に保険金支払い対象となっていると思いますので、契約保険会社に確認の上で保険適応での薬浴をご希望でしたら当院までご相談ください。
※薬浴シャンプーは基本的には事前予約制です。当日対応はできないこともあります。