標準治療に反応しないストラバイト結石の溶解

犬のストラバイト結石は基本的に細菌感染が原因とされています。
このため、尿細菌培養検査に基づく適切な抗生剤の投薬と、補助的な療法食の使用で多くの場合は結石が溶解します。
しかし、中には簡単にはいかない症例もいます。
標準的な内科療法には反応せず、外科摘出は飼い主さんが希望せず、溶解は諦めて維持治療を行っていた症例で、別の問題に対して治療薬を用いたところ、溶解傾向を示してくれている症例を経験しましたのでご紹介します。
症例の概要
この子は、他院で膀胱結石の手術を行ったが、すぐに再発してしまったということで当院にご来院されました。
療法食を与えていましたが、術後は再診や経過観察の指示がなく手術した動物病院には通院していないということでした。
高齢でその他の病気もあり、飼い主様は再度の膀胱結石摘出はご希望されませんでしたので、まずは標準的な内科治療を行うことになりました。
標準的内科治療
まずは尿の細菌培養検査です。
細菌が検出されましたので、薬剤感受性検査に基づく抗生剤の投薬を開始いたしました。
犬のストラバイト結石の典型像は、尿をアルカリ性にするウレアーゼという酵素を産生する菌が感染することで形成されます。このため、抗生剤により細菌感染を治療すれば尿が酸性化して結石が溶解します。治療の主軸は抗生剤ですが、補助的に療法食を与えることが多いです。
この症例にも標準治療を行いました。
しかし、顕微鏡検査上は細菌が検出できなくなり、抗生剤の効果は問題なさそうに思えるし、療法食は目標尿pH公表値が最も低いものを使っても尿pHが高値のアルカリ性のまま酸性化しません。
更に尿酸化サプリメントも使用しましたが、尿の酸性化は達成できませんでした。
維持治療に切り替え
抗生剤はいつまでも続けるものではありませんので休薬し、サプリメントを尿酸化メインのメチオニンサプリメントから、細菌定着防止メインのプロアントシアニジン系(クランベリー)のサプリメントに変更しました。
その後も尿は酸性化しませんでしたが、頻尿や排尿障害を起こさず、生活の質に問題なければこのままの維持医療とするしかないのかなと考えていました。
突然の尿酸性化
泌尿器の問題ではなく、別のトラブルに対してある薬の投薬を開始しました。
すると、これまでの標準的治療では全く酸性化してくれなかった尿が急に酸性化し、結石も溶解傾向を示していました。
トップ写真は左が治療後(治療中)で、右が治療前です。
使った薬を調べてみると、一応尿中への酸排泄を増やす傾向は出るタイプの薬のようです。
ただ、尿酸性化を目的として使われる薬ではありませんし、副作用もありますし、当ブログ情報を見て安易に使われるのは良くないので詳細は明かせません。お問い合わせいただいてもお答えできません。
まとめ
犬の膀胱結石で圧倒的に多い原因はストラバイト結石とシュウ酸カルシウム結石です。
このうち内科療法で溶解できるのはストラバイト結石です。シュウ酸カルシウム結石は溶解できませんし、混合結石も溶解は難しいです。
通常は抗生剤±療法食で溶解するはずのストラバイト結石が溶解しない、かつ、高齢やその他の疾患があって結石の摘出が難しい場合には、はら動物病院までご来院ください。
一例だけの経験で再現性がある方法かわかりませんが、一般的な治療ではないことやリスクをご理解いただいた上でどうしても内科的に結石溶解を試みたいという場合には、この症例で奏功した方法を試してみましょう。
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