短頭種気道症候群の内科治療

短頭種気道症候群は、パグやブルドッグなど鼻が短い特徴の犬種に生じる呼吸器症状(咳や呼吸困難)です。
チワワやポメラニアンも短頭種に分類されることがあり、実際にこれらの犬種でも短頭種気道症候群を診ることがあります。

喉の奥の軟口蓋の過長や鼻孔の狭窄など、解剖学的な異常が顕著な場合には外科的介入が必須な場合も多い病態ですが、内科治療も試みられています。
中枢のセロトニン濃度を高く、末梢では低くすることで上気道の開通性が保たれると考えられており、呼吸器科専門動物病院の先生が、ミルナシプランというお薬で2~4週程度であれば良好な状態を維持できたという発表をされています。ただ、このお薬での治療では、残念ながら徐々に効果が薄れてしまうということでした。

それとは別に、咽頭虚脱による睡眠時無呼吸症候群の内科治療としていくつかの薬の報告があります。ミルナシプランによる治療と理論も目的も同じ(だと私は理解しました)ですが、報告されている使用薬剤が異なります。
短頭種気道症候群の病態のひとつとして咽頭虚脱もありますが、イコールな病気ではありませんので同一視はできません。しかし、咽頭虚脱に対する薬の使用で短頭種気道症候群の発咳が良化する印象を持っています。効果の減弱が起こるかどうかは不明ですが、解剖学的変化が軽度な症例であれば、休薬期間を儲けたり投与間隔の調整などで長期管理できる可能性もあるのではないかと個人的には考えています。
短頭種気道症候群の手術を行うことができる動物病院は限られており、呼吸器科を標ぼうしている専門性の高い動物病院をご紹介することが多いです。様々な理由から、なかなか手術を受けさせるのは難しいけれども、呼吸状態が改善する可能性のある内科治療があるのであれば試してみたいという飼い主さまは、当院までご相談ください。