子猫を保護したら

ここのところ、子猫ちゃんを保護して飼い始めたという方がよくいらっしゃいます。私もですし。
写真のうちのぽんちゃんみたいに風邪症状が出ている、もしくは保護してから出てくる子も多いでしょう。
子猫を保護して今後飼っていくにはどうしたら良いでしょうか。まとめてみましょうかね。
まずは、生きていくには栄養を摂らせなければいけません。ミルクでしょうか。離乳食でしょうか。もうドライフードで良いのでしょうか。それを知るには体重を量りましょう。以下の表は標準体重での目安です。当然個体差や保護した時に削痩していれば多少ずれますが、かなり参考になります。また、歯が生えていなければミルクを与えましょう。

体重と週齢の目安

ワクチン接種は、当院で主に使用しているピュアバックスRCPの場合、8週齢から接種可能です。しかし、例えばノビバックTRICATは9週齢からと、種類によって多少接種可能な週齢が異なります。

保護猫の感染症の検査・治療

既に猫ちゃんを飼っている場合、保護した子から病気を感染させてしまう可能性があります。新しく保護猫を飼うのかは慎重に考えましょう。とりあずは隔離しましょう。

・寄生虫
外部寄生虫としてノミ、内部寄生虫として回虫条虫原虫と様々な寄生虫を持っている可能性があります。動物病院で駆除しましょう。
・猫エイズ 猫白血病
猫ちゃんにはFeLV(猫白血病ウイルス)FIV(猫エイズウイルス)感染症があります。特に猫白血病ウイルスの進行性感染の場合、生存期間中央値は2.4年と言われています。猫エイズの場合、生存期間に有意差はないと言われています。
感染直後は偽陰性となる可能性があるため、保護してすぐに検査した場合、感染の可能性がない環境で過ごして2か月以上経ってからの再検査が推奨されます。
・パルボウィルス感染症
突然の消化器症状と汎白血球減少を呈し、6か月齢未満の子猫の場合致死率が高い怖い病気です。ペットショップやブリーダー、保護センター等での散発的集団発生が主で、単独で保護された子猫がこの病気であることは稀だと思います。
・猫風邪
トップ写真のうちのぽんちゃんみたいな感じです。
症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまり・結膜炎などです。
原因として考えられているのは2種類のウィルスと3種類の細菌です。
ウィルスとしては、ヘルペスウィルス(結膜炎を伴うことが多い)とカリシウィルス(舌潰瘍を伴うことが多い)。
細菌としては、クラミジア、マイコプラズマ、ボルデテラです。
推奨される治療は、ヘルペスウィルスに対しては抗ヘルペスウィルス薬のファムシクロビル内服、カリシウィルスに対してはインターフェロン注射、細菌は3種類ともドキシサイクリンの内服です。
うちのぽんちゃんは、まずはインターフェロンを打ちましてあまり効果がなく、ファムシクロビルを内服しまして、効果があったけれども元気がいまひとつなく、ドキシサイクリンの内服も行い元気になりました。猫に内服薬を飲ませる場合は必ず水や食べ物を同時に飲ませてください。猫ちゃんは内服で食道炎→食道狭窄のリスクがあります。特にドキシサイクリンはリスクが高いと言われています。

その先の予防

・避妊 去勢手術
犬では病気の予防として推奨しますが、手術しなくても飼えないこともないですよね。マーキングとか発情出血とかありますが。
猫の場合、中性化手術はほぼ必須だと思った方が良いです。猫にマナーウェア(マナーベルト 腹帯)なんてつけられませんし、つけてもそこに陰茎はないです。男の子は去勢しないと家中にマーキング(においづけの排尿)されます。女の子も家の中で飼育する場合は周年繁殖となり、通年不定期に発情行動で大きな声で鳴いたりするわけですから、飼い主側も困りますし生理的欲求が満たされないのは猫ちゃんもかわいそうです。
猫の場合はオスもメスも中性化手術を行いましょう。
当院ではオスの去勢手術もメスの避妊手術も日帰りです。オスもメスも基本的には抜糸不要です。再診は1週間後です。
・フィラリア症予防
主に犬科の動物に寄生する寄生虫病ですが、猫でも喘息様の呼吸器症状や突然死の原因になり得ます。当院は現在でも犬のフィラリア症を診ることがある地域なので、猫ちゃんも予防した方が良いでしょう。

ぽんちゃんに便利だったもの

ぽんちゃんは最初はほとんど風邪症状もなくキレイだったのですが、1回目ワクチン後から風邪症状がひどくなり、目やにが凄くて目の周りに固まってしまって大変でした。そこで、このアイリッドラッシュを試してみたのですが、使いやすいのでおすすめです。今も毎日自宅で使用中です(写真は院内在庫なので未開封です)。
主には犬の涙焼け対策グッズなのでしょうけれども、猫風邪のケアにも使いやすいと思います。適切なお薬で治療しつつ今既に出ている分泌物はこういったものを利用してケアし、清潔に保ってあげましょう。

その他

食器とかおもちゃとか、ケージとかまぁいろいろあると思いますが、その辺はペットの用品販売の店員さんとか、受診した動物病院で聞いてみて下さい。だいたいはこんなところですかね。
猫ちゃんは長生きすれば20年くらい生きるわけです。長期に旅行は行きにくくなりますし、食事代やワクチン・抗体価検査代がかかったり、病気になれば検査・治療費も必要です。壁やソファや障子がボロボロにもなりますし、その子の性格によっては噛まれたりひっかかれたりもします。
でも、やんちゃな子猫はとてもかわいいですし、落ち着いて寝てばかりの成猫は大切なかけがえのない家族になります。そして老猫は、ただもうそこで生きてくれているだけでありがたい存在となります。
猫ちゃんを保護して、生涯飼育する覚悟は決めたけれども実際どうしたらよいかわからないや、という人はお近くの動物病院に相談しましょう。無理なく通える近所の動物病院が良いと思います。

猫カゼ治療後のぽんちゃん

トップ画像のうちの子です。まだ取り切れない眼脂が目の周りの残っていますが、治療して良くなりました!
かわいい...世界一かわいい。