フィラリア予防期間 2025年版

2024年の気温から算出した最新版のフィラリア症の感染期間を共立製薬さんが発表してくれました。
画像の下の方に小さく書いてありますが、「HDUとは犬糸状虫を媒介する蚊の体内でミクロフィラリアが感染幼虫に発育するのに必要な概算温度の単位です。」ということです。
ちょっとわかりづらいですかね。
桜の開花予想みたいな感じです。
2/1からの最高気温の合計が600℃に達すると桜が開花すると言われているみたいですよね。
HDUは1日の平均気温-14を毎日加算して、130を超えた日を感染開始日にするのだそうです。
ですので、このデータが絶対というわけではなく、だいたいの目安です。都市部の微小環境で、自然界ではあり得ないような暖かい環境中に蚊がいれば、通年感染することもあり得るでしょう。
とはいえ、参考にはなります。
2024年の気温データに基づく千葉の感染期間は4/30~11/16です。
昨年、予防期間前に確認した時は、感染開始日は5/4だったのですよね。
https://hara-ah.org/2024/01/17/%e3%83%95%e3%82%a3%e3%83%a9%e3%83%aa%e3%82%a2%e6%8a%97%e5%8e%9f%e6%a4%9c%e6%9f%bb%e3%81%8b%e3%82%89%e4%ba%88%e9%98%b2%e8%96%ac%e5%86%85%e6%9c%8d%e3%81%be%e3%81%a7%e3%81%af%e6%9c%80%e9%95%b7%e3%81%a7/
ちょっと早まってますね。地球温暖化ですね。
少し悩みますが、今年も昨年までと同様に、5月~12月までの8か月間の予防をおすすめいたします。
5月中にお薬を開始していただければOKとします。
今年も気温の上昇が早く、データ上の感染初日が更に早まるようでしたら、来年から予防開始の推奨を早めるかもしれません。
データ上の感染初日から1か月間を投薬開始日にしようかな。
でも終わりが早まる方が危険ですからね。いっそのこと4月~12月までの9か月予防にしようかな。ただ、そうなると料金が上がっちゃいますよね。今後の春の気温上昇が遅いことを祈りましょう。
予防薬の用法は1か月間隔(約30日ごと)の投与です。
しかし、これはもちろん安全域を踏まえた設定です。手元の成書では、予防薬の効果が不十分になる未成熟虫になるのは早くて感染後52日という記載があります。
当院の推奨予防期間は5月中に開始なので、最も遅くて5/31ですね。そこから約50日前だと、4/10くらいになります。
あくまでも私個人の見解ですが、4/10以降の感染なら5/31に投薬開始でも問題ないわけで、今年の気温上昇ペースが昨年よりも更に早くて10日くらい感染初日が早まっても4/20くらいですから、今年は5月中のフィラリア予防薬投与開始の推奨のままで大丈夫かなと。
上の方にリンクを置いた昨年の当院ブログでも述べておりますが、フィラリア抗原検査から1か月以内に投薬開始をお願いしております。それ以上間隔をあけると副作用リスクがあると考えています。(当院の見解です。動物病院により方針が異なることがあります)
早めに検査したいという場合には検査しても良いのですが、3月に検査したら4月から予防薬の投与を開始していただくので、当院の推奨よりも予防薬の投与が1回多くなります。
ここまで読まれた方の中で、「じゃあ50日間隔の投与でいいじゃん」と思われた方は論理的で素晴らしいです。
机上の理論としてはそれでも問題なさそうです。
しかし、フィラリア予防薬の認可は「1ヶ月ごとの投与」で取得されています。それ以上の間隔での投薬での予防効果は保証されていません。
また、リーチバック効果というのがあります。
フィラリア症に感染したとします。その後、いつも通り1か月以内に予防薬を与えたつもりが実は吐いてしまっていて、飼い主さまが気がつけなかったとします。
そうすると、感染から50日以上経過してから有効な予防薬の初投与になってしまうことがあり得ますが、その後予防薬の投与を続けることで駆除できる可能性が高まります。これをリーチバック効果と言います。
予防薬の投与回数が増えるので、50日間隔よりも30日間隔の方が駆除の可能性が上がるはずです。
それに、50日間隔は覚えづらいですよね。忘れそうです。私のおすすめは毎月1日投与です。忘れづらいです。
ということで、今年も当院のフィラリア予防の推奨期間は5~12月の8か月間といたします。
ただ、このまま気温の上昇傾向が続くなら、来年は4月からにするかもしれないです、というお話でした。
かかりつけの動物病院は、予防期間もエビデンスベースで検討する、はら動物病院を是非ご利用ください。