前十字靱帯断裂の治療 TPLO(脛骨高平部水平化骨切術)

当院では前十字靭帯断裂の治療として、Amuse動物運動器外科サービスの高瀬先生にTPLO法による関節の安定化手術を行っていただいております。
トップ写真は当院で手術を行った3症例の術後レントゲン写真です。

この記事に興味を持たれる飼い主さまは、既に他院で前十字靭帯断裂やその疑いの診断を受け、治療法を検索されてここにたどり着いていらっしゃると思いますが、「前十字靭帯断裂とは」、「TPLOとは」ということに関しては様々な動物病院がわかりやすい記事を作ってくれていますので、そちらをご覧ください。
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よく、「膝が前に出る」という表現がされるのですが、そうするとこの手術に関して理解しづらいと思います。膝が前に出るというよりは、大腿骨が脛骨の後ろに滑り落ちると考えた方が個人的にはわかりやすいです。
大腿骨が滑り落ちないように脛骨を円形に切って回して固定する手術です。
この手術が可能な施設はそれほど多くはないですし、また、執刀医の技量により手術時間が大きく変わる手術です。高瀬先生ほどの件数を執刀されている整形外科医は整形外科専門病院などの一部の専門医だけでしょう。
TPLOを年間数例しか執刀していない獣医師による手術よりも、毎日整形・神経外科手術をおこなっていて、TPLOも毎週のように執刀している獣医師による手術の方が安心です。
もちろんご希望があれば整形外科専門病院をご紹介も可能です。ただ、かかる費用は当院の倍くらいにはなるのではないでしょうか。

その他の手術法として、関節外制動法というものもあります。これは骨に穴をあけて糸を通し、靱帯の代わりにするという手術法です。
治療成績としてはTPLOと大きく変わらないと言われております。しかし、当院では基本的には行いません。関節外法をご希望の場合は手術と術後管理に慣れている他院での実施をおすすめします。

何故当院で関節外法を行わないのかといいますと、術後管理に不安があるからです。
TPLO法は手術のみでほぼ完結する治療法で、特別な術後管理は必要ありません。
もちろん、ある程度の運動制限や定期通院によるレントゲン撮影は行いますが、包帯で固定したりは不要です。
これに対して関節外制動法を行う場合は、術後4-6週間しっかり包帯を巻いて厳重な運動制限を行うことが必要です。
関節外法で使用する糸はいずれ切れてしまうのですが、長期間しっかり固定を保って自己の組織による関節の安定化を達成する必要があります。術後早期に糸が切れてしまうと関節の状態は改善しません。
包帯は定期的に巻きなおす必要がありますし、強く巻きすぎると血流障害が生じたり、弱いとズレてしまったり、包帯で皮膚損傷が生じたりなど、術後の包帯法に手慣れている施設で実施する必要があります。
当院は休診日がありますので、休診日に包帯が外れてしまった場合に責任が持てません。
更には当院の場合、外科の先生をお呼びしての手術となることもあって、術後の包帯・通院を考えるとトータル費用にも差がなくなってしまいます。
このように、厳格な術後管理を必要とする関節外法を当院で実施するメリットはないため実施しておりません。

前十字靱帯断裂もしくはその疑いと診断されていて、遠方の専門病院までは行けないし、術後に頻繁に通院したり厳重な運動制限は辛いな、とお考えの飼い主様は、はら動物病院までご相談ください。